2015年7月1日水曜日

【輝く処方箋】芝浦工業大学建築工学科教授・蟹澤宏剛「省力化と省技能は違う」

--建設産業の現状と今後について

 「わが国の人口は確実に減少する。それを前提に考えなければならない。ただ建設産業は基幹産業であり、それなりの建設投資はあると思う。特に、そうした中で維持保全のマーケットが小さくなることはない」

--人口減少社会での建設生産システムのあり方は

 「日本の建設業は分業化しすぎている。先進国、途上国を問わず、下請けが5次、6次と重層化している国はない。日本特有のシステムであり、世界的に見ても特殊なことだという認識が必要だ」
 「その上で、生産性を上げるためには、まず個々人の能力を上げることだ。そのためには人材の育成システムを作り上げなければならない。これまでのように『見て覚えろ』ではなく、体系的に教育・訓練することが必要だ」
 「その1つが多能工化である。今の建設現場では延べ人数がかかり過ぎている。例えば1人でできることを5人でやっている、1日の中で数時間しか仕事をしていないといったことが少なくない。それらを集約できれば、重層構造は自ずと浅くなり、生産性も向上する。昔のとびや住宅の世界の大工は元来、多能工である。しかし、今は発注単位が細分化され過ぎている。細分化に合理性があるのは、高度成長期のビジネスモデルである。成熟社会になった今、新たなビジネスモデルを構築しなければならない」
 「次に、現場での作業量を減らすということ、つまりはプレハブ化、機械化を進めていかなければならない。失われた20年間にもプレハブ化は進んできたが、ゼネコン目線でやってきたから省力化にはなっても、必ずしも省技能化にはなっていなかった。むしろ高度な技能が必要になったり、職人にしわ寄せが及ぶことも多かった。これからは、ゼネコンが職人目線を持たなければならない。それがなければ本当に現場に役立つ新しい技術を開発できない。繰り返すが、重要なのは省力化と省技能化とは違うということだ」
 「また、工数が半分になったら単価は1.5倍にということでなければ、プレハブ化や機械化は職人には何のメリットもない。特に、省技能化ではない省力化の場合は、それを考えるべきである」

--新規入職者を確保することも必要では


 「賃金だけでなく、休日の問題も大きい。4週8休を無理というのではなく、何から始めたらいいか、建設業界全体で考えてもらわなければならない。内部で対立するのではなく、日本建設業連合会、全国建設業協会、建設産業専門団体連合会および全国建設労働組合総連合が結束して対応しなければならない。また、建設業のサマータイム化も考えてはどうか。午前7時から仕事を始め、午後4時に終わる。既に米国やドイツではやっていることであり、机上の空論ではない。これくらいの目標がなければ、建設産業に人は入ってこない」
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