2015年6月22日月曜日

【建設産業の明日】R対応は成長戦略 総合力でソリューション提案、継続的に利益上げる体質へ

建物の老朽化が進む中で、リニューアルへの対応を企業の成長に取り込む動きが顕著になってきた。特に設備工事業は、設備の耐用年数が15年程度と躯体より短いことから、その対応強化に向けた取り組みが積極さを増している。一方で、ゼネコンでもリニューアル事業を組み込んで他企業との差別化を目指す動きもみられてきた。リニューアル市場が企業の成長にどう結びつくのか、戦略をまとめた。

 設備工事業では、設備の新設の後にグループ会社を含め運用やメンテナンスにもかかわり、適切なタイミングでその設備を更新してさらにそのメンテナンスに携わるというサイクルを担う動きが各企業に定着した感がある。顧客からメンテナンスも引き受け、設備の長寿命化や省エネ化に向けた最適制御を進めて関係を保ちつつ、更新の提案とその業務の受注につなげるという手法だ。
 その象徴的な動きが、空調設備工事業のトップクラスにある高砂熱学工業と新菱冷熱工業の子会社再編だった。高砂熱学工業はビル管理を担っていた丸誠を子会社化し、設備の運用をメーンにしていた子会社の高砂エンジニアリングサービスと昨年10月に合併させた。新菱冷熱工業は4月、リニューアル工事や保守管理サービスを展開する新菱テクニカルサービスと、首都圏を中心に設備の新築やリニューアル、メンテナンスを手掛ける関東冷機を合併させている。

◆セットで請け負う 一括で担当するメリット
 富士古河E&Cが取り組む建築や空調、電気通信などをセットで請け負う手法も目立ってきた。同社では建物の改修や増築といった小規模な建築工事も担いつつ、合わせて空調や電気設備の工事を複合して受注している。「一括で担当することで原価が低減できるメリットがある上、顧客にもワンストップでやってもらえるメリットがある。調整もしやすく円滑な工事になる利点もある」と、今後の成長の要とみている。対応するため、1級・2級建築士の増員や、空調の技術者に電気工事の資格取得を奨励するなどのマルチスキル化を検討している。
 昇降機設備の業界でも、こうした動きが顕著だ。昇降機の更新にとどまらず、関連する照明設備や空調設備などビル全体も含めた事業の受注に力を入れている。
 東芝エレベータは、空調機器を扱う東芝キヤリアと照明設備を扱う東芝ライテックの東芝グループ企業と連携し、ビル全体のリニューアルに乗り出した。エレベーターの更新のタイミングを契機に、ビル全体の省エネ化につながるとして空調や照明の更新の提案も始めている。その逆に、これまで関係のなかった顧客からの業務を請け負うという効果も出た。横浜市が発注した防犯灯LED(発光ダイオード)化のメンテナンスや神奈川県小田原市のESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業などでメンテナンスを担当しており「顧客情報を共有することで受注できる成果も出てきた。シナジー効果を高めたい」(東芝エレベータ)という。

◆ゼネコンの動き
 一方、ゼネコンはどうか。これまでは、リニューアルはロットも小規模で利益の確保につながらないといった見方が占めていたものの、設備工事業界と同様にグループ企業も含めてビル管理に乗り出し、成長につなげる動きも見え始めている。
 その1つが、戸田建設による戸田ビルパートナーズの設立だ。グループ会社の千代田土地建物と戸田リフォームが合併し、昨年4月に発足した。建物管理を主な事業とする千代田土地建物と、リニューアル工事をメーンに手掛ける戸田リフォームを再編し、建物の管理・メンテナンスからリニューアルまで、ライフサイクルに応じたサービスを一貫して提供するようにする。
 こうした体制により、グループの総合力でソリューション提案を展開していく構えだ。戸田ビルパートナーズでリニューアルに取り組み、更新が必要になれば戸田建設も含めてかかわる。グループできめの細かい対応を顧客に提示しながら、関係強化につなげる。戸田建設が持つ顧客情報や工事の実績などを共有して連携を強めるほか、実績を積み上げることで新たな得意先の獲得にも結び付けていく。
 メンテナンスを含めた取り組みは、2020年の東京五輪の後を見据えた動きでもある。市場の縮小も見込まれる中で、従来以上に顧客を囲い込み、継続的に利益を上げる体質とする方向に企業がシフトしつつある。提供できるサービスを増やし、顧客の信頼を高めるなど、差別化に向けた動きが加速している。
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