2015年6月23日火曜日

【建設産業の明日】どうなるインフラ輸出 トータルコストの優位性PR、人材育成の重要さ増す

日本のインフラシステム輸出は、政府の「インフラシステム輸出戦略」に基づき進められている。戦略は2013年5月に策定、14年6月には改訂版をまとめた。インフラの受注範囲は、設計だけや建設だけから、設計・建設・運営・管理を含むシステム全体に広がり、総理や閣僚によるトップセールスの実施を始めとした官民連携の強化などによって具体的案件の受注が実現している。ただ、欧米や中国、韓国などの企業との国際競争を勝ち抜くことは容易ではないのも事実。今後の受注に向けては、ハード面での川上から川下までの一貫した取り組みに加え、インフラ輸出のあらゆる取り組みの基盤となる人材育成が一層重要になる。写真はベトナム・ニャッタン橋のネームプレートを除幕する太田国交大臣ら。

 戦略では、10年に約10兆円の日本企業によるインフラシステム受注実績を、20年までに事業投資による収入額なども含み3倍の約30兆円にまで拡大することが目標になっている。
 この目標達成に向け政府は、▽企業のグローバル競争強化に向けた官民連携推進▽インフラ海外展開の担い手となる企業、自治体や人材の発掘・育成支援▽先進的な技術・知見などを生かした国際標準の獲得▽防災やエコシティー、宇宙システムなど新フロンティアインフラ分野への進出支援▽エネルギー鉱物資源の海外からの安定的で安価な供給確保推進--を具体的施策の5本柱に掲げている。政府関係者によると、「これまでに新たなファイナンス制度やメカニズムの導入、既存制度の改善に取り組み、企業の受注に向けた政策支援ツールを整えた。(官民連携の柱である)トップセールスは特に意識的に取り組み、今後も進める」という。
 トップセールスは、東南アジア諸国連合(ASEAN)や中東、北米、アフリカ、中南米、インド・南西アジアなどで行い、経済ミッションも同行した。実施件数は12年の25件から13年には67件に増えた。連動するように相手国の総理や閣僚の訪日件数も12年の43件から13年には103件に伸びた。戦略に掲げた施策を推し進めた結果、受注実績は12年が137件約3兆2000億円だったが、13年は285件約9兆3000億円(金額判明分)に大幅拡大した。
 インフラシステム受注の主役は企業であり、あくまでも政府は受注を支援する立場だ。企業がさらに受注を伸ばすために「日本企業の強みである技術、ノウハウを最大限生かしてほしい。また、きめ細かなニーズは大事だ。今後も制度の創設・改善などを政府に提案してもらえれば」(政府関係者)と話している。

◆トータルコストでは日本が優位、人材育成がカギ
 一方、今後の受注拡大には人材育成がかぎを握ると焦点を絞り込む。最終的に人が市場開拓や日本製品・技術の魅力向上、海外展開促進、人的なネットワーク形成といったインフラシステム輸出の基盤をつくるものであるからだ。
 例えば、インフラ整備のイニシャルコストは中国を始めとした新興国企業に比べ日本企業は高い。しかし、インフラ完成後の運営やメンテナンスのノウハウがあり、故障率も低いなど「日本のインフラは長い目で見ればトータルコストでは優位な面がある」。こうした日本式インフラ整備の良さを相手国に理解してもらい、受注に結び付けていくには、人材の育成が欠かせない。
 人材育成は、短期的には効果が現れにくいが、相手国の開発への貢献と日本の経済成長を同時に目指す方策として中長期的に極めて重要になる。そこで政府は、▽防災分野など日本の優れた技術・ノウハウへの理解を深める▽インドのデリーメトロ建設・運営やミャンマーのティワラ港建設・運営などハードにソフトをパッケージで組み合わせる▽ベトナムやミャンマーでの建設・不動産分野の法制度整備支援といった良好なビジネス環境整備▽優秀な建設人材育成の日本・ベトナム協力など質の高い労働力を多数生み出す▽人的ネットワーク形成--の5項目を中心に、相手国の人材育成を着実に継続し、強化する方針だ。ある政府関係者は「実際、多数の相手国から人材育成を求める声が寄せられている」と明かす。
 今後は、相手国人材の日本における研修を、将来の顧客に対する営業活動の一環にも位置付けて研修カリキュラムを作成していく考えだ。インフラシステム輸出の提案では、安全規制面での協力や運転・保守管理を担う人材育成など包括的な人材育成のパッケージ化も推進していく。
 また、日本企業の人材育成も大切になる。「これまで以上に相手国政府・企業への提案を分かりやすく説明する能力が求められるほか、民間資金を呼び込むためにPPPに関心を持つ国が増えているため、PPPに詳しい人材も必要になる」(政府関係者)。建設産業の企業は、相手国人材育成への積極的な貢献とともに、自社のインフラ輸出を担う人材育成も求められている。

■海外インフラ受注へ日本企業をサポート/JOIN
 2014年10月に政府が設立した「株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」。政府が最大出資者となり、民間からの出資も受けて立ち上げた。海外インフラ案件の受注を目指す日本企業を資金、人材面から支援するため、現地事業体に対して出資や資金の貸し付け、専門家の派遣などを行うほか、相手国との交渉や情報収集なども担う。
 支援対象事業は鉄道や道路、港湾、空港、都市機能を高める建築物、公園、下水道の整備、維持管理・運営など幅広い。長期的に収益性が見込まれるなどの条件を満たした案件に出資したり事業に参画する。
 JOINによると、出資や事業参画を決定した案件はまだなく、「4月末時点で幅広い分野から数十件の相談・問い合わせが寄せられている」という。
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