2015年6月19日金曜日

【建設産業のいま】地域建設業の生きる道 つながりが強さを生む―若手経営者がNWづくり

「他の地域で頑張っている若手経営者の取り組みを知りたい」。静岡県のある建設会社の若手経営者は、熱っぽくこう語る。岡山県の建設会社社長も「若手経営者が今後の地域建設業について話し合う場がほしい」と周囲に話している。お互いの会社のことは知らないが、他の地域の若手経営者とつながり、語り合いたいという思いを持つ経営者は全国に顕在している。

 地域の建設業者はこれまで、経営を持続するために地域の建設業団体に加盟し、共存する方法をともに話し合い、地域としての公共事業の必要性を同じ地域内の建設業者とともに訴えてきた。だが、公共投資の大幅な減少と社会情勢の変化の中で、激しい競争の波が全国津々浦々まで襲い、ここ10数年、共存の難しさを痛感するようになった。このまま地域の建設会社は地域内の公共工事を受注するだけで生きていけるのか。この先も地域の守り手だと胸を張り続けることができるのか。将来への不安感を抱き、行動を始める若手経営者が増えている。
 彼らが選択しているのが、他地域の経営者との連携だ。全国建設業協同組合連合会の青柳剛会長は「地方建設業は見通しが立たない。解決のためのキーワードは『緩やかな連携』だ」と強調する。
 「地域を越えて情報共有すれば面白いことができる」と、北山建設(福井県美浜町)の北山大志郎社長は、激減する公共投資の中でもがいた末に、他地域の同業者との情報共有に光明を見いだした。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で公共土木を主体とする建設会社経営者と情報交換を続け、地域の空き家問題解決策を実践するなど、いまや地域の若手経営者として注目を浴びている。
 彼らは他地域の企業を取り込んで全国区の企業になるという野望を抱いているわけではない。これからも地域の守り手であり続けるために、志を同じくする他地域の企業とつながり、情報を共有し、アイデアを出し合い、良い取り組みを並行展開する。その根底には地域建設業のネットワークが、自らの企業を助けるという考え方がある。

◆例1 事業継続協定で経営危機に備え
 岡山県の奥野組と小坂田建設、オーネスト、仙台市の皆成建設、島根県奥出雲町の吉川工務店は、危機管理対策機構を媒介として「お互い様BC(事業継続)連携ネットワーク協定」を締結した。災害時に相互に支援し合う協定だが、参加各社の本来の狙いは別にある。平時にも各種事業で交流するという点だ。実際、参加企業のつながりで、タイへの進出の可能性を検討する企業も出始めた。
 奥野組の奥野一三代表取締役は「危機的な状況に対応できるよう体制を整えてきたが、自社だけでは対応できなくなってきた。仲間と一緒に考えたい」と協定を結んだ理由を語る。皆成建設の南達哉代表取締役は「表現は悪いが、『儲かる事業継続』」と協定を表現する。共通しているのは、事業継続を災害時の対応と捉えるのではなく、「事業継続=経営危機への備え」と位置付けている点だ。
 危機管理対策機構の細坪信二事務局長は、「自社単独で収益を上げるのも大切だが、これからはネットワークを通じて、他分野に出る。何かあった時に、実はそれが新しい事業の柱になる可能性もある」と協定の意義を説く。つながることで、経営危機が起きても事業を継続するための選択肢が用意できる。

◆例2 強みの相互交換で相乗効果
 新潟県胎内市の小野組(小野貴史社長)と福島市の寿建設(森崎英五朗社長)は、3月に永続的な友好関係を確立していくための提携協定を結んだ。トンネル補修に強みを持つ寿建設と、建築工事も手掛ける小野組が、それぞれの土木・建築技術者の維持・補修技術で相互交流するほか、管理業務の効率化や新工法開発などでも協働する。
 ある技術・工法の伝授・指導という点で思惑が一致したというレベルではない。お互いが、今後のメンテナンス市場の拡大という見通しを持ち、かつ、事業エリアが重なり合わない。お互いの良い取り組みを取り込み合いながら、新たな市場を、手を取り合って切り開いていく。小野社長は「コストプラス利益で値決めしてきた建設産業界の考え方を根本から疑うことからスタートしたい。現場がコストを超えたバリューを創造するセンターになるために現場は永続的な“改善”を突き進め、発注者に提案し続ける。それで新市場を切り開いていくことが必要だ」と先を見据える。お互いの強みを交換することで、相乗効果を生み、地域の守り手であり続けられるようにする好事例の1つだ。

◆例3 技能者確保・技術向上法を共有
 全国の地域建設業の若手経営者ら15社が参加する「地域建設業新未来研究会」(CCA)が一般社団法人化したのは3月。建設職人に特化した求人ポータルサイト「WAZAIKI」を開設し、地域の専門工事業の求人情報を発信している。初弾の「新潟版」を参考に、参加各社が同じフォーマットで水平展開できるようにした。技能者確保策のアイデアの共有だ。
 さらには、研究会の参加企業がお互いに社員を出向させ、それぞれが得意な工事の技術を現地で学ぶ仕組みも整えるという技術の共有にも取り組み始める考えだ。
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