2015年6月19日金曜日

【建設産業の明日】ストックと向き合う メンテは最先端市場

明治、大正、昭和、平成と近代化を目指した日本を下支えしてきたのは間違いなくインフラだった。国の基礎を築いてきた社会資本はいま蓄積されたストックとして「維持管理・更新」という新たな市場を生み出しつつある。必然的に老朽化に向かっていくインフラという資産にどう向き合っていくのか。維持管理・更新という新たなマーケットで建設産業はどういった役割を果たしていくのか。そこには期待と不安が渦巻く。写真は20歳を過ぎたレインボーブリッジの補修。

 時代はまさに維持管理・更新へとシフトし始めた。企業が確信したのは、2014年7月にスタートした道路管理者への定期点検の義務化だ。成熟社会とされる日本にとって老朽化インフラへの対応は喫緊の課題。インフラメンテナンスへの取り組みは、造ることに重点を置いてきた建設産業の構造的な部分に「使う」あるいは「使い続ける」ための視点を植え付けることになった。

◆賢く使い可能性を最大限引出す
 端的な例が、既存インフラの資産としての価値や必要性と向き合いながら、その可能性を最大限に引き出す「賢く使う」という発想だろう。そこには「メンテナンス」の根底にある、既存インフラを後世へと確実に引き継いでいくストックマネジメントの考え方がある。
 当然、管理するインフラの量が多くなればなるほど、これまで多くの自治体が行ってきた対症療法的な維持管理の形態には限界がくる。その時、管理者に求められるのが計画性や効率性といった戦略的な発想だ。
 公共財としての資産価値を適切に評価しつつ、劣化要因や使用限界の考え方がそれぞれ違う各構造物の性質や特性に応じた維持管理を確実に講じていくには「点検」「診断」に始まるメンテナンスサイクルを着実に回していく必要がある。

◆課題があるからビジネスになる
 「いますぐやらなければならないこと」--。社会資本整備審議会道路分科会(分科会長・家田仁東大大学院教授)が“最後の警告”としてまとめた『道路の老朽化対策に関する提言』に代表されるように、メンテナンスサイクルの構築に向けた国土交通省のスタンスは明確だ。
 建設産業の市場として期待感も大きい。点検・診断・措置・記録というメンテナンスサイクルが回り続ける限り、あるいはそこに社会資本が存在する限り、必要不可欠な事業になるからだ。メンテナンスは建設産業にとって確実に中長期的な市場になると言っていい。
 しかし、その市場規模は予想の域を出ないというのが実情。何よりもまだまだ市場として確立しているとは言い難いが、メンテナンスで生み出される実需を確実にものにしていくには、課題があるからこそビジネスチャンスが広がる、そんな逆転の発想が求められる。
 見逃してはならないのが、公物の都道府県と市町村の比率(割合)だ。橋梁で言えば、全国約70万の橋梁のうち、約50万橋が市町村道だということだ。このことからも単純な割合でみる需要の中心は「市町村道」にあることは確実だ。
 実際、市町村の維持管理水準に目を向ければ、日常的な巡回点検どころか、自らが管理している構造物すらきちんと把握できていない。これまでの維持管理水準が低いからこそ、地域建設業を含めた建設産業にとって市場としての可能性は大きく広がる。

◆異分野産業との奪い合い勝抜く

 5年に1度という定期点検のサイクルを踏まえれば、道路分野における「メンテナンス市場」が確立するには、この5年間が1つのキーポイントになる。5年間の点検結果がメンテナンスサイクル“1周目”の市場規模を決定付けることになるからだ。
 ただ、維持管理・更新といった、いわゆるメンテナンスの一つひとつは大きな利益が期待できないというのも一般的な見方。“うま味”が少ないとされてきたように、建設産業にとっては新設を優先してきた従来の事業構造から発想の転換が求められることになる。
 対象となる既設のインフラが存在しているメンテナンスは、見方を変えれば、事業に入る前の段階で対象構造物の状況を把握することができる。つまり、リスクをある程度読むことができるということになる。大きな利益は期待できなくても、ローリスクで継続性が高い市場と言い換えることができる。
 IT(情報技術)やロボット技術など、これまでとは違った分野での技術開発の進展で、建設産業だけでなく、異分野で活躍する多くの企業がメンテナンスというローリスクで継続性が高い「優良市場」を狙う可能性は高い。
 この競争を勝ち抜くには、社会資本をつくり出し、その管理を担ってきたトップランナーである建設産業が中心となり、異分野技術を積極的に取り込みながら、メンテナンスを最先端の市場として育んでいく必要がある。
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