2015年6月23日火曜日

【建設産業の明日】ストック市場の掘り起こし “守る側”の視点に存在感

インフラの老朽化に対する懸念が叫ばれて久しい。橋梁などからのコンクリート塊の落下といった事故が既に全国で顕在化しているなど、インフラの老朽化は国民の安全・安心を脅かしかねない深刻な問題だ。社会資本ストックの維持・補修は、市場開拓によるビジネスチャンスの拡大というよりも、どちらかといえば社会的課題の解決という側面がより強い事業でもある。これまでインフラを“作る側”により大きな軸足を置いてきた建設業界だが、“守る側”の視点がより存在感を増してきた。インフラを守るため、民間企業による独自の取り組みが本格化している。画像は東洋建設のラクテック工法(仮締切吊上)。


◆新技術が潜在市場を刺激も
 ピーエス三菱は2011年から、既存のプレストレスト・コンクリート(PC)橋を点検・診断する「橋守(はしもり)プロジェクト」をスタートさせている。自社施工の橋を中心に数千橋の点検結果をデータベース化している。現在は2巡目以降の点検・診断も進んでおり、劣化の進行を時系列的に把握できる。
 橋の安全を確保し、適切な維持管理・改修を行うのが目的だが、劣化状況などを踏まえて新設の橋にも耐久性向上策などを盛り込みたい考え。また、災害時や不具合発生時の検索が迅速にできるというメリットもある。道路管理者から要望があった場合には結果を提供する。

三井住友建設らの橋梁点検カメラ
同じくPC橋梁に強みを持つ三井住友建設は、07年から「橋梁高品質化委員会」をスタートさせ、橋梁の計画段階から設計、施工、維持・保全までの一貫した取り組みを展開してきた。維持・保全では「橋梁インスペクションエンジニア制度」として、高度な技術を持つエンジニアのOBが自社施工の橋梁を点検する仕組みもある。
 一方、同社と日立産業制御ソリューションズは、社会インフラ用点検装置「橋梁点検ロボットカメラ」の販売を開始した。伸長可能なポールに設置したカメラを使い、目視確認が難しい場所を点検するシステムで、13年に開発した技術を製品化した。

◆建設コンサルタントの取り組み
 建設コンサルタントでは復建調査設計(広島市)の取り組みが特徴的だ。ことし3月、橋梁などの老朽化対策を目的に「高架道路・橋梁点検車」を導入した。通常、こうした点検車両は道路管理者が保有するのが一般的で、コンサルタントによる独自所有は珍しい。点検需要の増加で点検車のレンタルが難しくなってきたという背景がある。
 3mの大型パレットデッキを搭載し、垂直方向には最大地上高さ7m、最大地下深5.4mに対応、下ブームは最大長さ8.21mまで伸びる。「保有することできめ細やかなサービスができるようになる。国や自治体など多くの需要に対応してきたい」(小田秀樹社長)。今後、全国各地の事業所やグループ企業と連携しながら、点検車をフル稼働させ、今後も増加する点検業務需要に対応していく方針だ。
 今後のインフラ改修ニーズを見込んだ新技術の開発も相次いでいる。海洋土木工事を得意とする東洋建設は、河川橋梁桁下などの低空頭、狭小区間で橋脚耐震補強工事を実施する際に、仮締切の作業工程を大幅に効率化する「ラクテック工法」を開発した。新開発した低空頭対応型クレーン台船2隻を使い、最小3m程度の低空頭下での作業を実現。小型クレーンを使う一般的な工法に比べ仮締切設置・撤去の工期を約75%短縮し、工事費は約10%縮減する。また、仮仕切材が大枠で組めることから潜水作業も削減でき、安全性向上にも貢献するメリットがある。
 地震発災時などの輸送路確保に向けた道路や鉄道などの橋梁の耐震補強は喫緊の課題だが、一部の橋梁は桁下空間が狭くて大型重機が使えないため、耐震補強工事の施工が困難となっていた。主に河川下の低空頭、狭小区間での導入をターゲットにしているが、そのほかの水域にも適用できるという。既に神奈川県内の河川橋梁下の橋脚耐震補強に適用し、良好な施工性を確認している。

◆既設インフラ改修事業
 老朽化対策に加えて、利便性の向上を目的とした既設インフラ改修事業も増えている。中には新技術の投入が不可欠な事業もあり、官民一体となって技術革新を後押しする動きも出てきた。首都高速道路会社と富士ピー・エス、三井住友建設が、首都高の既設PC床版の拡幅に向けた共同研究を進めている。既設部と拡幅部の接続・一体化が難しいとされるが、富士ピー・エスなどは強みのプレストレス技術を使った拡幅構造を提案した。
 提案技術の「プレキャストPCリブを用いた床版拡幅工法」は、既設部と拡幅部を梁状のリブで接続し、リブと床版の合成断面にプレストレスを導入。リブには高強度プレキャスト部材を使って軽量化を狙うほか、拡幅部はPC板と場所打ちRC床版によるPC合成床版とする工法などの検討が進んでいる。
 橋梁の点検業務や補強工事は増加の一途をたどっている。大規模な改修を控えたインフラも数多い。民間企業はこうした動きを踏まえ、既存技術のブラッシュアップも含めて技術メニューの多様化を急いでいる。管理者のニーズに適した技術、ニーズを刺激する技術をいかに提案できるかが受注を左右する。発注者のニーズに対して先回りしながら技術開発を進める動きも加速しているため、今後は新技術が潜在市場を掘り起こすという構図も出てきそうだ。
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