2015年6月18日木曜日

【建設産業のいま】多能工の光と影 技能の親和性がポイント

少子高齢化の進展に伴う労働人口の減少により、建設業における技能労働者の減少と高齢化の進行は避けられない。省人化などの新たな技術開発による工業化や機械化の進展とともに、技能労働者の多能工化も考える必要に迫られてくる。ただ、高度成長経済下で細分化されてきた現行の専門工事業種を元に戻すことには難しい部分も多い。多能工化は今後どうなるか。既に大都市圏と地方とでは温度差も生じている。

 多能工化のメリットとして、個々人の能力が上がり、それが現場の生産性向上にもつながると言われている。職種が細分化していることで、1日の中で半日しか仕事をしていないといった状況や次の作業までの手待ちが生じている状況を改善できるからだ。多能工化することで、1日フルに働けるようになり、1人当たりの生産性が上がるというわけだ。
 ただ、現在のように細分化されてきたのには、それなりの理由がある。昭和30年代からの高度経済成長の中で、機械化が進み、建築物は高層化が進んだ。そうした状況下で専門工事業は細分化されてきた。それは細分化することが合理的だったからだ。例えば過去、とび・土工の職種は足場などの仮設工事のほかポンプ車を保有し、コンクリート圧送なども行っていた。しかし、コンクリート圧送は1つの職種となっていまに至っている。それを昔のように、とび・土工の専門工事業者がポンプ車を保有し、技能労働者に圧送技能者の資格を取得させて、作業させるのは非効率である。さらに、ポンプ車などの新たな設備投資も伴う。

◆修得時間、品質にも差
 さらに「多能工化は難しい」という主張の背景には、技能を身につけ、一人前になるまでには時間がかかるということがある。例えば型枠大工や左官などは一人前になるまで10年はかかると言われる。1つの技能を身につけ、優秀な技能労働者に育てることで生産性の向上につなげてきた。ある専門工事業者は「例えば、プロ野球選手で、他のスポーツと兼務している選手はいない。1つの技能を身につけるということは、それだけ難しい」と説く。さらに、すべての技能が優秀とは限らないことから、品質の低下を危惧(きぐ)する意見も少なくない。
 また、多能工化の難しさについて、安全面を障害と指摘する声もある。それぞれの職種で、現場における安全対策のポイントが異なり、職種ごとの技能だけでなく、安全面についても一から学ばなければならないからだ。
 ただ一方で、職種や地域によっては、多能工化に取り組んでいるところもある。例えば、北海道では左官が土間屋の仕事も行っているという。また内装仕上げの職種でも、ボードと軽天の2つの作業を1人の技能労働者にさせている企業もある。
 こうした状況を踏まえると、ある程度、つまり2、3の技能を労働者に身につけさせることが可能な職種と、秀でた1つの技能を身につけさせ、作業の空いたときには他の職種の手元など補佐的な作業や清掃などの軽作業をやってもらうという職種に分かれる。つまり、技能と技能の親和性が高い技能は多能工化が可能であるということだ。
 また、工業化など新たな工法が開発されることによって、これまでの技能にプラスして新しいノウハウが求められることも今後想定され、そうした流れから多能工化が進展する可能性も秘めている。建設労働者が減少する中で多能工化を考えなければならないが、「安全」と「品質」の確保を大前提として取り組まなければならない。
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