2015年6月18日木曜日

【建設産業のいま】ゼネコン受注の変化 各社が本業へ原点回帰

ゼネコンの経営は、外部環境の変化に大きく左右されてきた。建設投資の波に連動するように業績が推移し、市場の低迷時には受注高という“量”を、好調時には利益という“質”を追い求めることを繰り返してきたといえる。請負業の宿命とはいえ、そこから脱却しなければ、これまでと同じ轍(てつ)を踏むことになる。20年近くに及ぶ冬の時代から春の兆しを迎える中、ゼネコン各社は外部環境に左右されない安定的な経営に舵(かじ)を切り始めている。

 3年前の2013年3月期決算は、上場大手・準大手ゼネコン26社のうち、10社が営業赤字、11社が最終赤字という状況に陥った。低採算で受注した工事が東日本大震災後の労務・資機材価格の高騰により、さらに採算が悪化。当時、ある準大手トップは「以前は低採算で受注しても施工段階の創意工夫により、一定程度の利益を回復できたが、それが不可能になった」と漏らした。その結果、6%台で推移していた完成工事総利益(工事粗利)率は、26社平均で5%を切り、建築工事に至っては、5%以上を確保してきた工事粗利率が3%台にまで落ち込んだ。
 13年3月期決算以降、建設需要の増加を背景に、各社は採算重視の受注戦略を鮮明に打ち出し、社内の決裁基準を厳格化してきた。複数のゼネコンで受注判断機能の強化などを狙った専門部署を新設する動きもあった。これらの取り組みが功を奏し、不採算工事の消化と相まって、各社の工事粗利率は改善傾向にある。

◆過当競争からの脱却図る

 市場が活況を呈し、各社が選別受注を繰り広げる中、ある準大手ゼネコンの営業マンは「今が絶好のチャンス」と打ち明ける。主戦場の民間建築市場で大手ゼネコンが選別受注の姿勢を鮮明にした結果、これまで付き合いのなかった大手ディベロッパーなどから受注の引き合いがあり、「顧客基盤の拡充につながる」と期待を寄せる。
 現在の建設需要が20年の東京五輪開催後もしばらくは続くと予測されている中、市場に踊らされてきたゼネコンからは、その予測に懐疑的な声も聞こえてくる。だからこそ、売り手市場となっている現在の好機を逃さず、新規も含めて優良な顧客を囲い込んで、将来の需要減に備えたいというのが各社の本音だ。
 別のある準大手ゼネコンの経営企画担当者は「採算は重視するが、全国ゼネコンとしての体制を維持していくためには一定の受注量(売上高)は不可欠」とし、「ひいきの得意先が増えれば、必要な受注量の土台が安定する。いまは、その土台固めを行っている段階。他社との差別化を図り、顧客の要望に応えた成果物を残せば、土台はおのずと安定してくる」と説明する。その上で「それができなかったゼネコンはいずれ淘汰(とうた)される」と厳しくみている。
 各社の動向を見ると、ソリューション型の営業展開で顧客対応を強化したり、コスト、工期、品質の面で顧客のニーズに応えられるようBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などICT(情報通信技術)を活用した技術開発に注力するなど、さまざまな形で他社との差別化を試みている。
 いかに顧客のニーズを把握し、顧客が満足する成果物を納めるか--。「技術の安売り」と揶揄(やゆ)された過度な安値受注から脱し、ゼネコンがたどり着いた結論は“本業への原点回帰”といえる。それは準大手に限らず、大手も同様で、複数の大手ゼネコンが中期経営計画で本業である建設業の深耕または再生・強化を掲げている。
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