2015年6月17日水曜日

【建設産業のいま】いまと将来見据えるゼネコン いかに職人を確保するか

■需要の増減にも対応、不足解消へ“両面作戦” 協力会社と関係強化

 「優秀な技能者は、隣の現場から高い給料を提示されれば、仕事の途中でも、すぐに移ってしまう」。幹線道路整備によって、同じ地域で複数のトンネル工事が進む近畿の現場で準大手ゼネコンの幹部は苦笑いした。

 建設業界では、将来的な担い手不足対策の必要性が叫ばれ、官民挙げた取り組みが始まっている。ただ、今後の建設需要を考えれば、2020年までにいったんピークを迎えるものの、その後は落ち着き、横ばいか現在より少なくなると見通すゼネコン経営者は少なくない。需要増のために技能労働者を大量に抱え込みすぎると、将来的な需要を見れば多すぎる。一方で、人口減少を考えれば優秀な若手確保は不可欠だ。このバランスを探る動きがゼネコン各社で始まっている。
 全国ゼネコンを対象としたある調査によると、大手・準大手の対象企業すべてが、厳しいながらも技能労働者を確保できていると答えた。その理由は大手ゼネコンの6割以上が「1-2年のうちに協力会組織を見直した・見直す予定」と答えたことに表れている。専門工事業者の「囲い込み」だ。
 日本建設業連合会がまとめた長期ビジョンでは、技能労働者の処遇改善に向け、元請けによる技能者の社員化の必要性が提示された。しかし、ゼネコン各社で需要の変動を考え、いまは協力会社と関係を強化し、将来にも備えるという“両面作戦”を目指す動きが見える。

◆大手中心で進む優良技能者優遇
 ゼネコン各社は、協力会社との関係強化に向け、さまざまな手を打っている。鹿島が優良技能者認定制度として「鹿島マイスター制度」を新設。飛島建設も「とびしまマイスター制度」を創設したほか、竹中工務店では「シニアマイスター」が4月に初めて誕生した。西松建設でも上級職長手当を15年度から4倍に増額。東急建設も、認定後2年目の「東急建設マイスター」報奨金を3倍に引き上げた。
 協力会組織の魅力向上による会員確保策も広がっている。大林組では林友会の職業訓練校を開校し、会員の技能者訓練を支援し始めた。
 鹿島は協力会の鹿島事業協同組合と鹿栄会に一定量の計画発注を確約した。大成建設も14年に倉友会を大幅に再編し、より協力会社の声が同社に届くようにした。

◆元請けの動きに危機感増す1次

 技能労働者の確保に向け、危機感を感じているのは大手ゼネコンだけではない。元請けからすれば、より優秀な技能者を確実に確保したい。だが、1次下請けである協力会社が優秀な技能者を確保できないのであれば、実際の職人雇用者である2次下請けを1次下請けに引き上げようと考える。効率的な施工の面からしても、技能者を直接雇用する協力会社に対する魅力は高まるばかりだ。
 当然ながら、こうした「優秀な技能者を確保できる協力会社」との関係強化を目指す元請けの動きに、最も強い危機感を示すことになるのが1次下請けだ。社会保険未加入対策や公共工事設計労務単価引き上げを政府が実行する実質的な背中を押したのは1次下請けを中心とした専門工事業界だった。だが、その1次下請けが、社会保険にも加入させず処遇も改善しなければ技能者を雇用する2次下請けが離れ、経営が立ちゆかなくなり、自らの首を絞めることになりかねない。専門工事業業界が社会保険未加入対策や処遇改善に躍起になる理由はここにある。実際、専門工事業者は、優秀な技能者の確保に向けて動き始めている。

■進む企業形態の見直し 直接雇用・専属班企業化

 埼玉県入間市の鉄筋工事業nonakaは、14年8月から、日給月給の親方・職人すべてを月給制の正社員に移行させた。直接的な技能者確保策だ。
 都内の鉄筋工事業者も、これまで対外的には自社の「社員」としてきた“専属班”に対し、建設業許可を取得するよう説得を始めた。1次下請けの仕事だけを請ける“専属班”は社員であるはずだが、社会保険の形態や工事の契約形態を考えれば、実質的には1つの企業であり、1次下請けからの仕事は請負契約を結ばなければならない。この不明確な、過去の慣習として続いてきた雇用形態を一般社会に合わせ、専属班を1企業にする。経理など“職人”が苦手とする業務はすべて1次下請けが引き受ける。いわば、専属班を自らのグループ企業にしようとしているのだ。
 建設産業専門工事業団体連合会(才賀清二郎会長)も無策ではない。団体会員が技能労働者の住まいを確保させやすいよう、都市再生機構(UR)と連携協定を締結。会員企業から入居希望を集め、UR賃貸住宅の空き部屋を紹介し始めた。
 技能者が一般の企業社員と同じ雇用形態で、同じ生活環境で仕事に打ち込める。これが担い手確保に求められている最大の目指す姿と言える。
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