2015年6月19日金曜日

【建設産業の明日】管理者たちは何を望むか 維持・更新は民主役の舞台

高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化対策や、適正な維持管理・更新、長寿命化が大きな課題となっている。本格化する維持・更新時代にインフラ管理者はどう向き合うのか。その組織体制や維持・更新への新たな取り組みなど管理者視点から、ストック需要に迫る。

◆高速道路
 首都高速道路会社が、大規模更新事業の初弾として施工者選定手続きを進めている首都高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事は、改正品確法の適用第1号案件でもある。試行とはいえコンサル業務や工事発注の仕組みを大きく変えた。設計・施工一括発注方式で「技術提案審査・価格等交渉方式」の試行対象、さらに総価契約単価合意方式、契約後VE方式なども採用している。
 技術提案審査・価格等交渉方式の採用について、同社は「首都高で初めて通行止めをせずに道路を更新する前例のない大規模更新工事。多種多様な構造・施工法があり、各社独自の高度で専門的なノウハウ・工法が含まれることが予想され、最適な仕様の選定が難しい」とし、「工事着手後のリスクを契約段階で最小化するため、民間の優れた提案技術の採用が必要」と説明する。橋梁構造も含めて、施工者の技術提案をより川上領域から求めた点が注目されている。
 東日本高速道路会社も、今後本格化する高速道路の更新事業で技術力を生かすため、ゼネコンの川上領域からの事業参入や多工種で編成したグループへの発注などを検討していく考えだ。

◆ダム
 一方で、治水・利水などの機能を持った重要な社会資本であるダムでは老朽化や耐震化、適正な維持管理や更新、長寿命化などが課題となっている。水資源機構では、こうした課題にどのように向き合い、対応しているのか。
 「『安全で良質な水を安定して安くお届けする』経営理念のもと、公の魂のもとで、民間のいいところを取り入れるという『公魂民才』の姿勢で取り組んでいる」(甲村謙友理事長)。ダムの機能保全計画を策定し、老朽化とともに耐震強化も含めた対策が今後、動き出す。
 現場を担う技術者には、建設と管理を人事ローテーションし、両方を経験させる。以前は建設のウエートが大きかったが、いまは予算的にも建設と管理は半々くらい。甲村理事長は「『管理の時代』というと、日々同じ業務を繰り返すようなイメージを持たれるが、そうではない。『管理の時代』は、イコール『改築の時代』と考えてほしい」と強調する。毎日の管理の中で、より良い操作性などを考えることが、今後の改築に生かされる。技術スキルではすべての分野を把握することが、特定分野に強い人材育成につながる。
 大山ダム(大分県)建設では、ダム本体工事としては国内で初めて高度技術提案型の入札方式を採用した。その結果、大幅なコスト縮減や環境配慮にもつながった。今後、大規模な改築などにもこうした民間ノウハウを活用できる方式を採用していく考えだ。一方では、機能を維持しながら工事を進める難しさもある。水資源機構のダムでは、まだ大規模更新の案件はない。今後に備えて、直轄事業の対象工事に職員を派遣している。先行している現場を実際に経験してもらい、技術を習得させる人材育成を行うなど、今後の大規模更新を見据えている。

◆土木インフラ
 土木インフラの維持更新は大規模構造物だけではない。むしろ、昭和30年代から40年代に整備された道路や橋梁、公園などが一斉に更新時期を迎える市町村など基礎的自治体にとっては、より深刻な問題だ。「市の財政事情や人口減少を考えると対応は困難。担当する職員を増やすことも難しい」と、多くの首長が口をそろえる。
 そうした中、東京都府中市では、2014年度から先進的な土木インフラマネジメントに取り組んでいる。市の中心市街地を対象にした「けやき並木通り周辺地区道路等包括管理業務」では従来、建設や造園、清掃各社に個別で委託していた業務を包括的に委託した。総合的なマネジメント業務が必要になり、大手道路会社に参画の道が開け、造園や清掃各社などとグループを組み16年度末までの3年間、試行的に実施している。道路などの日常的な巡回管理、不具合通報対応、補修などを包括的に民間委託するのは全国初の試みだ。
 こうした流れは徐々に広がりを見せる。再選を果たした東京都東村山市の渡部尚市長は府中市の取り組みについて「当市でも検討していく」との考えを示す。図書館や福祉施設などの公共施設に加えて、道路など土木インフラの維持更新で民間企業のノウハウに期待を寄せる。道路管理の包括的な委託については、単独の市にとどまらず、隣接する周辺市との連携による広域管理の方向性も視野に入れている。共通の仕組みや規則を定めることで、データ管理や道路巡回・保守、発注支援・監理について受託企業の経費削減も期待できる。
 土木インフラの維持・更新時代は、大手企業と地元企業、ゼネコンと専門工事業がそれぞれをすみ分ける形で、新たな事業参入の機会を生む可能性を秘めている。その際、民間企業が先行開発したデータ管理システムの提案などが大きな“武器”になる。スタンダードと呼べる事業手法が、今後確立されていく中で、維持更新事業から目が離せない。
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