2015年6月22日月曜日

【建設業の明日】動き出した特需 建設コンサルは組織拡充し市場開拓、総合管理計画策定は消極的

これまで新設が主流だったインフラも老朽化が進み、維持管理や修繕、長寿命化、更新というストック需要が急速に増大することが予測されている。右肩上がりの税収は見込めず、限られた予算の中でやり繰りしながら対処しなければいけない。後手に回らないよう国は、地方自治体が公共施設等総合管理計画を策定する場合、2014年度から16年度までの3年間に限り、策定に必要な経費を特別交付税措置として支援を始めた。建設コンサルタントにとって総合管理計画の策定業務は特需となるのか。メンテナンス市場への取り組みを追った。写真は空洞調査のRV(応用地質)。

 総合管理計画は、自治体が管理する土木と建築すべての施設を対象に、老朽化や利用状況を把握するとともに、地域ごとの人口予測を踏まえた上で、維持管理・更新など中長期の取り組みを決める。14年6月、総務相は全自治体に策定を要請した。14年度末までに策定を終えたのは111自治体で、全体の6%程度にとどまっている。
 国の財政的な支援は今年度を含め残り2年間のため、15年度予算に策定費用を計上する自治体も多く、プロポーザルでの発注も増えている。建設コンサルタントは、策定業務の受注が大幅に増加する可能性がある。特需として期待できるのか。
 ある建設コンサルは「1件当たりの金額が1000万円を切り、手間も掛かるので、それほど人数を割くわけにはいかない」と指摘する。別の会社でも「利益率が低い業務で、人手が取られる」ため、積極的には受注しない考えを示す。しかし、メンテナンス市場そのものには各社とも関心が高い。

◆コンサル各社の対応
 エイト日本技術開発は6月1日付で、インフラ保全センターを新設する。センターは実務的な組織で、岡山市の本店、東京の本社、中部支社の計3カ所に設置して全国をカバーする。小谷裕司社長は「道路や河川、港湾、下水道などの高度な点検と診断ができる技術者の直営部隊が、岡山と東京に十数人いる。このメンバーをコアに、約10人をプラスしてスタートする」と明かす。インフラの補修や長寿命化は、新設よりも技術的に難しいため、社内で技術を伝承しつつ、先端の保全技術を社外にも発信する役割を担い、メンテナンス需要に対処する。
 応用地質は4月から維持管理事業部を新設した。公共施設だけでなく民間も対象で、調査とコンサルティングを手掛ける。民間は湾岸地域の工場やプラントの埋設管、鉄道の土構造物やコンクリート構造物をターゲットにしている。公共施設について中川渉常務執行役員維持管理事業部長は「ロード・ビジュアライザー(RV)で、道路の下の穴を見つけ、対処の仕方も示す」ことに注力する。RVは走行しながら路面下の空洞を探査できる車両で、既に4台保有している。まずは得意技術で実績を増やし、トンネルや橋梁の点検に広げていく戦略を立てている。
 オリエンタルコンサルタンツなどの持ち株会社であるACKグループは、前期(14年9月期)の連結売上高348億円に対し、3年後の17年9月期は420億円に目標を設定している。実現に向けて、インフラ保全・運営管理など重点化事業の受注を、前期の1.2倍、受注全体の約5割に拡大する。重点化事業には今後3年間で15億円を投資する計画だ。
 日本工営は、土砂災害への対応を想定した国土保全事業部とともに、インフラマネジメント事業部を、14年度に新設した。市町村は技術者、予算、ノウハウが不足しているため、発注者の立場に立ったマネジメントサービスを提供する。1件ずつの単一業務ではなく、包括的で長期の業務を目指している。
 橋梁を中心とする構造物の維持管理に重点を置いているのは大日本コンサルタント。14年度に保全エンジニアリング研究所を発展的に解消、インフラ技術研究所を設置した。保全エンジニアリング研究室、特殊構造技術室に加え、新エネルギー事業室やPM事業室、川づくり研究室の5室で構成した。
 高久晃社長は、本体だけでなく「子会社の活用と地元の会社との連携を強化・拡大する」と方針だ。東日本大震災の復興需要やアベノミクスによる公共事業の拡大で、同社の構造保全部門の受注は新設が6-7割を占めているが、「震災直前は保全が半分以上を占めていた」ことから、保全の比率が再び上昇するとみて維持管理に注力する。
 各社とも組織を新設して、メンテナンス市場に意欲的に取り組む姿勢を社内外に示している。
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