2015年6月22日月曜日

【建設産業の明日】ストック資格者を生かす 登録の有無が受注に大きく影響

2012年12月に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機に、インフラの老朽化問題に社会的な関心が高まっている。国土交通省は、事故の再発を防止するため、道路橋や道路トンネル、横断歩道橋など5施設を、14年7月から5年に1回点検することを省令で義務付けた。
 道路だけでなく河川なども含めたインフラ全体の点検・診断が必要で、対象施設は膨大な数になる。既存の民間資格を活用しなければ対応できないため、国交省は14年11月、適切な資格を大臣登録する技術者資格登録規定を官報告示、初弾となる公募をスタートした。写真は機械式簡易ボーリングでの調査の様子。

◆大臣登録対象は19区分
 公募対象は、▽道路橋梁(鋼橋)▽同(コンクリート橋)▽道路トンネル▽砂防設備▽地すべり防止施設▽急傾斜地崩壊防止施設▽海岸堤防等▽港湾施設▽空港施設▽公園遊具--の10施設。施設ごとに点検と診断業務を単独または一体で実施するものや、同一施設・業務でも管理技術者と担当技術者向けの資格をそれぞれ募るケースもあるため、対象は計19区分となった。
 大臣登録の資格は、直轄業務のプロポーザル方式や総合評価落札方式で、未登録資格よりも高い評価が得られることから、公募には12団体から延べ176資格の申請があった。国交省はことし1月、建設コンサルタンツ協会、斜面防災対策技術協会、沿岸技術研究センター、土木学会、橋梁調査会、日本構造物診断技術協会、日本鋼構造協会、長崎大学、プレストレストコンクリート工学会、日本コンクリート工学会の10団体、延べ50資格を登録した。

◆RCCM 受験数効果はまだ先
 このうち、登録が最も多かったのは建コン協のRCCM(シビル・コンサルティング・マネージャ)。19区分すべてに申請して、7施設10区分に登録された。登録による受験者数の増加などの効果について前川秀和副会長は「1年くらいたってみないと分からない」と慎重な姿勢を示す。
 今後の対応について大島一哉会長は「協会内部で議論している。資格制度の中身を見直すのか、強化するのかということは、もう少し勉強してみないと分からない」と述べている。RCCMは建設情報を含め、土木の22分野を網羅しているため、ほとんどすべての施設に登録が可能とみている。
 14年の公募は施設そのものが対象で、地盤はあまり関係していなかったため、登録申請を見送った全国地質調査業協会連合会。今秋にも公募が予定されている第2弾は、初弾の点検・診断分野に、新たに調査・設計分野が加わる見通しのため、公募内容を確認した上で、「応用地形判読士(応用地形マスターI級含む)と地質調査技士の2つを申請する」考えだ。
 応用地形判読士は12年度に創設、合格者数は14年度までの3年間で51人と少なく、マスターI級でも89人で、レベルの高い資格となっている。地質調査技士は1966年ににスタート、これまでに約2万1000人が取得している。03年に部門制を導入して現場調査部門、現場技術・管理部門が誕生、04年に土壌・地下水汚染部門が追加となった。このうち現場技術・管理部門を登録申請する方針だ。

◆新たな資格制度も
 国交省の登録制度をにらみ、新たな資格制度も誕生する。ことし2月に設立された河川技術者教育振興機構は、河川維持管理技術者と河川点検士を15年度に創設した。6月に9都市で河川維持管理講習を開いたあと、試験を実施する。建設コンサルタント、測量、維持工事などの技術者を想定している。
 首都高速道路会社も点検・補修の体制を強化している。14年度に点検技術者資格認定業務を首都高速道路技術センターに移管して、点検技術者の技術・技量と知識を継続的に維持するため、中間審査を実施する。資格認定者数は約1200人で、中間審査は現行の講習会と試験に加え、屋内外の施設を使った技能確認を、認定後の2年目に義務化した。
 企業側の対応はどうか。ある建設コンサルタントのトップは「既に資格手当を支給しているが、支給していない資格が登録された場合、手当の対象に加える可能性はある」という。また、別の企業の役員は「受験資格を満たしている社員は、積極的に受けるよう促す」方針だ。
 インフラの老朽化は確実に進み、メンテナンス分野は成長市場で、資格の有無が受注に影響を及ぼすことになるため、各社とも取得者数の増加に向けた取り組みが活発化しそうだ。
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