2015年6月17日水曜日

【建設産業のいま】書類削減が生む効果 東京都と国交省の取り組み

公共事業の設計などの業務や工事では、受発注者がやりとりする書類は、着手時から前払い金、業務実施・施工、既済部分や中間の検査、完了時など多岐にわたる。受注者は紙書類や電子データの作成に追われ、事務量の負担感は大きい。発注者も書類や電子データの作成に多くの時間を割いている。国土交通省と東京都における受発注者双方の負担を減らすための取り組みを通して、書類削減のポイントを探る。

◆東京都 システム間連携で効率化
 東京都は、公共事業の各段階での生産性向上やコスト縮減などの実現に向け、紙でやりとりしていた受発注者間の情報を電子化し、公共インフラの整備・管理において真に必要な電子情報を双方が効率的に受け渡しできるよう取り組んでいる。具体的には、2014年3月に策定した「東京都CALS/ECアクションプログラム2014」に基づき、システム間の連携やデータの二重入力を減らすことなどを進めている。
 プログラムは、受発注者間のコミュニケーションを円滑にして、発注者業務も円滑化し、双方が協力することで効率的にインフラを整備、管理していくことを狙いに策定した。また、「将来の老朽化対策などで活用するため、正確な情報をストックし次世代に引き継ぐという使命もある」(建設局)という。
 都には現在、工事の件名や工期、契約額など基本的情報を発注者が入力する「工事管理システム」、施工中に受発注者が「休日等の工事施工届」などの情報をやりとりする「工事情報共有システム」、受注者が竣工図などを納める「電子納品保管管理システム」がある。システムはそれぞれが独立しているため、受注者が電子納品する際には、工事管理システムと同じ情報を入力しなければならない。
 都によると、「建設局が年間に発注する1000件程度のうち、1-2割程度で受注者による入力ミスが生じている」(建設局)という。それも西暦と和暦の間違いといった単純なものが多い。入力ミスがあると発注者も工事管理と電子納品の両システムの情報を突き合わせ、電子納品の情報を直す手間がかかる。正確なデータを次世代に引き継がなければ、次世代によるインフラ整備時にも混乱が生じる。
 真に必要な電子情報を効果的に活用するためには、独立しているシステムの連携が不可欠になる。システム間が連携すれば、工事の基本的情報を受注者が入力することがなくなり、発注者だけの入力で済む。また、システム間連携に向け、各データ項目間の整合を取るため、項目の共通化作業も進めている。
 工事情報共有システムも、「マニュアルを見ないと操作ができない」といった声が寄せられていることから、使い勝手の向上を目指し、改善に取り組んでいる。既にトップページのメニューを統合・削除して、受発注者双方が必要な情報をすぐに取り出せるようにした。今後は、情報の内容を充実させるとともに、データ入力のミスを防ぐためのチェック機能も構築する。
 GIS(地理情報システム)の有効活用にも着手している。いまの情報は文字情報だが、地図上に情報を落とし込んでいく。将来的には、画面上で地点をクリックすれば、その場所のインフラ整備にかかわるあらゆる情報が取り出せるようなる可能性がある。
 都では3つのシステムが連携した「公共事業支援システム(仮称)」を18年度までに構築することを目指す。「いまは順次システムの改善を進めている段階。今後、使いやすくなるシステムを受注者に利活用してもらい、互いが協力して業務を効率化し、よりよいインフラづくりを進めたい」(建設局)と話している。

◆国土交通省 紙と電子の二重納品防止
 国交省は、電子データと紙書類による二重納品を防ぐため、工事着手前の「入り口」と完成検査時の「出口」で対策を講じた。着工前の事前協議を原則化して、電子か紙にする書類をあらかじめ決める対応に切り替えた。完成検査では、事前協議に基づく書類以外は工事成績評定の評価対象外とし、2015年度から港湾空港分野を除いた同省直轄工事で適用を始めた。
 対策を講じたのは、紙か電子のいずれかで発注者に提出する工事写真や工事帳票、工事打ち合わせ簿、施工計画書、工事履行報告書、品質管理資料などの「工事書類」。どちらかの提出で済むのだが、現場担当者は電子で作成した上で、体裁を整えた紙でも提出した方が検査官の印象がよいのではといった感覚的な思考が働き、両方の資料を作成して、非効率になっているケースがある。
 対策では、特記仕様書に発注者へ提出・提示する書類の種類と紙・電子の別について、工事着手前に事前協議すると明示した。電子で扱う書類は、検査時などに紙で提出しないとも明記した。工事成績評定実施要領にも、事前協議による作成書類以外は評定評価の対象外にすることを明確にした。
 建築工事でも、事前協議を行い、現場説明書の中に省略可能な書類を明示する。統合できる工種を決めるなどして、全体の書類量を減らす。
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