2015年6月23日火曜日

【建設産業の明日】中国AIIBのインパクト アジア市場への影響さまざま

 中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想が、多方面から話題を集めている。現時点ではAIIBの全容は見えないものの、アジアのインフラ市場に一定の影響を及ぼす可能性は否定できない。海外事業を柱の1つに掲げる日本のゼネコンを始めとした民間企業が、アジア市場で何らかの影響を受ける可能性はあるのだろうか。日本がAIIBに参加すべきか否か、また各国の政治的な駆け引きやパワーバランスの行方などは別として、AIIBがアジアのインフラ市場に与えるインパクトについて関係者の声を集めた。

 早々に参加を決めた隣国の韓国。現地の海外建設協会は歓迎の意向と受注拡大に対する期待を寄せた。韓国の『ハンギョレ新聞』は3月26日、海外建設協会幹部のコメントを交え、「AIIBは韓国のアジアインフラ事業に大きな機会」と報じている。同紙によると、同協会幹部は「AIIBは韓国企業のアジアインフラ供給事業に大きな機会を与える。国家別参加持分により自国企業の工事受注機会が左右されるのが現実だ。国家の財政負担を押し切っても出資持分を10%ほどまで高めたい」とコメントしたという。自国内の建設需要が低迷している韓国だけに期待は大きいようだ。

◆悲観と楽観が交錯
 今後、長期的に国内インフラ市場の落ち込みが懸念される日本にとって、言うまでもなくアジアは重要市場の1つ。アジアでの受注拡大を思い描いているのは日本のゼネコンも同じはず。日本では、韓国のように業界団体がメッセージを発することもなく、静観の構えに見える。しかし、AIIBをめぐってさまざまな声があるのは事実だ。
 ある大手ゼネコン幹部は、「AIIBが立ち上がったとしても、その時点で直ちにどうこうなる、という危機感はまったく抱いていない」と話す。その上で「10年後、20年後に中国の存在感がさらに高まっている可能性は十分ある。外交姿勢なども徐々に洗練されていくかもしれない。そうなった場合、アジア諸国がこぞって中国の方を向き、インフラ市場がAIIB加盟国に席巻されてしまうのではないかという懸念はある」と指摘する。
 同様に「それがAIIBからの財源かどうかにかかわらず、AIIBの動きに便乗して中国のゼネコンがアジアでさらに幅を効かせてくるのではないか」(準大手ゼネコン役員)といった見方もある。
 実際、東南アジアの建設市場では、価格に強みを持つ中国勢や技術レベルの高い韓国勢の存在感は既に高まっている。日本勢が競り合って、受注を逃すケースも多々ある。このため日本のゼネコンは、工事の難易度や付加価値の高い案件をターゲットに受注活動を展開している。
 一方、日本が代々の総裁を送り込んでいるアジア開発銀行(ADB)の案件でも、日本企業による受注はわずか。麻生太郎財務相は会見で「ADBで開発をする場合でも、日本企業が受注する比率は0.5%ぐらいだろう」と述べている。この発言に賛同するゼネコン関係者は多く「ADBの例もあるように、それほど大きな影響はないと思う。実際、東南アジアでは、ADBの主要出資国がオーストラリアだと思いこんでいる地域もあるくらいだ」(準大手ゼネコンの海外勤務経験者)。一方で、ある建設コンサルタントの副社長は「例えばプロジェクト・ファイナンス案件の場合、AIIBとADBどちらの融資条件が有利か、といった選択肢が増えるのであれば歓迎だ」と冷静に見る。
 日本の建設業界はAIIBの動きを踏まえ、アジアのインフラ市場にどう向き合うべきか。
 ある建設業関連団体の幹部は「日本のゼネコンは長期的にプロジェクトの川上段階の仕組みづくりから参加して、請負側にしわ寄せが来ない仕組み作りを求めていくべき。『さまざまな機関の協調融資によってプロジェクトを組成し、適正なプロジェクト進行をしてほしい』といった要望を国や国際機関に発信していくこともできる」と提案する。
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