2015年6月19日金曜日

【建設産業の明日】新技術は救世主になれるか 近接目視が3D計測の障害

土木構造物の定期点検がスタートし、点検業務の増大に対応する手段として、3次元レーザー計測などの「新技術」が注目されている。建築プロジェクトでは設計・施工段階の3次元モデルデータを維持管理の効率化に活用する試みも動き出している。デジタル技術の活用は、維持管理時代の救世主になり得るか否か。現場は大きく変わろうとしているが、障害も見え隠れしている。

 省令に「近接目視」が明記されたことが、新技術導入のネックになっている--点検業務の現場からはこんな声が聞こえてくる。国土交通省が既存土木構造物の定期点検を義務化したのは2014年7月。壁面画像と点群データを取得できる走行型計測車両3台を保有する計測検査(本社・北九州市)ではトンネル点検の需要増に身構えていたが、「いまだ小休止の状態が続いている」と明かす。
 トンネルの点検は道路を片側通行にした上で高所作業車を入れたり、場合によっては点検用の仮設足場を組む対応も必要になってくる。走らせるだけで、壁面の変状を詳細に把握できる走行型計測車両は、長さ1㎞のトンネルであれば2分半ほどで計測を完了できる。点検業務を担う建設コンサルタントからは本格導入への期待が寄せられていた。交通規制なしに点検調査できる合理性が評価され、総合評価などの技術提案に盛り込まれるケースが多く、着実に計測実績を積み増してきた。
 車両による計測では画像データでひび割れ位置、点群データで周辺の形状を把握できるため、点検で重要になる地山の変状までも読み取ることができる。10年10月の初計測から15年2月までに国内の1割に当たる1159本(約590㎞)のトンネルを計測したが、定期点検の義務化以降はわずか88㎞の実績にとどまっている。省令で定められた「近接目視」の対応は作業員が近づいて確認する必要がある。地方自治体からは点検の効率化を求める声は多いが、現時点ではレーザー計測による点検は導入が難しい。現在は、点検前に当たりを付けるスクリーニング手法として計測車両が使われるケースが急増しているという。

◆ロボット技術への期待

 建設現場での活用に期待が集まる「UAV」(無人航空機)。大手ゼネコンでは短時間で広範囲を測量できるUAVの優位性を土木工事の進捗管理に活用しようと、施工現場で実証実験を行う動きもある。現場からは「活用の幅は未知数。構造物の点検や災害時の状況把握にも応用できる」との期待感も高まっている。
 国交省の次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会は、14年度からロボット技術の有効性を検証してきたが、現時点では人による点検作業などのレベルに達していないとの見解を示している。橋梁の維持管理ではロボットを使って近接写真を撮影し、クラックなどを把握することはできるものの、飛行系ロボットを活用した場合には風の影響もあり、実用化にはまだ課題が残るとの見解を示している。画像処理などソフト技術のさらなる開発も指摘している。

◆維持管理にBIM/CIM
 膨大なインフラストックの現状把握に新技術導入への期待が広がる一方で、企画から設計、施工、維持管理に至る一連の生産サイクルを見据えた国交省のCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)試行も最終段階の検証フェーズに入っている。16年度には導入ガイドラインを示すが、そこで重要視しているのは3次元モデルデータを、維持管理にどう活用するかという部分。産学官の検証プロジェクトをスタートさせ、維持管理に活用できる設計・施工段階の情報を洗い出している。
 7月にコンクリート構造物の維持管理や補修・補強の考え方を提言として発表する日本コンクリート工学会は、劣化を判定する数値解析ツールや、情報データベースの構築を重要テーマとして位置付けている。新設プロジェクトを対象に生産段階に応じて3次元モデルデータの利活用を進めるCIMとの「リンク」も意識するが、まずは膨大な既存ストックの現況データをいかに整理していくかが急務と先を見据える。
 民間建築プロジェクトでは、NTTファシリティーズが東京都江東区に建設した自社の研究開発拠点で、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データとFM(ファシリティ・マネジメント)システムを連携させる日本初の試みを実現させた。設計者でもある同社は施工者の竹中工務店などと連携し、設計・施工段階から将来の維持管理を想定した施設づくりを行い、点検保守や修繕改善などのライフサイクルコスト(LCC)を約2割削減する試算も導き出した。
 このように維持管理の詳細なシミュレーションが実現できる背景には、3次元モデルデータの存在がある。いわば3次元の基盤情報を整えることで、さまざまな切り口から検証が可能。走行車やUAVなどを使った土木構造物のレーザー計測も、取得した点群データが3次元解析の基盤情報になる。構造物の3次元化が、今後の維持管理時代を支えるキーコンテンツに他ならない。
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