2015年6月18日木曜日

【建設産業のいま】現場運営に変化の兆し 100万人離職に備え生産性向上

政府の経済対策や2020年開催の東京五輪特需という追い風を受け、ゼネコンの業績改善が進むなど建設産業界に好機が訪れている。一方、市場環境に合わせて人員体制を縮小してきた結果、増大する工事量に施工消化能力が追い付かないといった課題も建設現場では顕在化している。日本建設業連合会(日建連)は、3月に発表した長期ビジョンで25年までに高齢者を中心に100万人を超える技能労働者が離職するとの試算を明らかにし、技能労働者の確保とともに建設生産システムの合理化(省力化・省人化)が喫緊の課題と位置付けた。“大量離職時代”に備えた生産性の向上や、より魅力ある産業を目指した長時間労働の是正、安全を支える人材の育成強化など、さまざまな課題へ対応するため、現場運営は大きな変革期にさしかかっている。

 建設業は現在、技能労働者の処遇改善を始め、担い手確保・育成に業界を挙げて取り組んでいるが、賃金や社会保険加入などの労働条件改善は生産コストの上昇を招く。コスト増加を抑え、より良い生産物を適正価格で提供していくため、生産性向上は避けて通れない。
 日建連は、生産性向上に向けた具体的な取り組みの初弾として、新技術・新工法の変遷、プレキャスト化やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の現状などの取り組みを紹介するパンフレット『建設イノベーション~建設現場における省力化・省人化~』を作成した。「2015年度公共工事の諸課題に関する意見交換会」で発注者に配布するなど具体的なアクションを起こしている。ゼネコン各社は、新技術、新工法の開発・導入などによる施工の省力化・省人化を推進しているが、生産年齢人口が減少する中、今後はさらなる取り組みの強化、技術革新の加速が求められそうだ。

◆長時間労働是正で魅力高める
 さまざまな技術革新などにより、現場の省力化・省人化は着実に進展しているが、すべてが機械化できるわけではなく、今後も建設生産を支える主役は技術者であり技能者であることに変わりはない。将来の建設業を担う優秀な人材の継続的な確保に向けて、長時間労働の是正など処遇改善へ理解を示す企業トップも多く、一部では休日取得促進の取り組みが成果を上げつつある。
 日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が14年11月実施した施工現場の「統一土曜閉所運動」では、閉所率(振替日を含む)が前年同月比4.3ポイント増の50.4%と5期ぶりに上昇した。日建協は「加盟組合側の積極的な取り組み、企業経営者側の長時間労働に対する危機感など意識の改善が大きい」と分析している。
 長時間労働の是正に向けては、建設コンサルタンツ協会が13年から会員企業によるノー残業デーを実施している。対象を協会全会員に拡大して14年10月の全水曜日(合計5回)を対象とした実態調査結果では、定時後1時間以内の退社率の平均は8割近くに達するなどの成果を上げている。
 魅力ある産業に向け、他産業との人材獲得競争に打ち勝つためには、危険と隣り合わせの労働環境改善も重要な課題だ。ひとたび事故が起これば、工程遅延やその後の受注にも影響しかねず、収益にもダメージを与える。ゼネコン各社はこれまでも安全管理徹底に努めてきたが、人手不足も手伝い、現場では新規入職する未熟練労働者対策という新たな課題も生じている。
 厚生労働省がまとめた14年(1-12月)の労災発生状況(確定値)によると、建設業での労働災害による休業4日以上の死傷者数は、前年比0.03%減の1万7184人で4年ぶりに前年と比べ減少に転じた一方、死亡者数は10.2%増の377人と2年ぶりに悪化した。死亡災害の増加の要因として同省は「建設投資の増大に伴う全国的な人材不足により新規参入者が増え、人材の質の維持や現場管理に支障を来していることなどが考えられる」とみている。
 利益の源泉である現場の安全徹底に向けては、ゼネコン各社もこれまで以上に力を入れている。中期経営計画で安全への取り組みを戦略の柱に据えるゼネコンも多い。大手クラスでは大成建設が品質と安全管理体制の強化として、品質・施工不具合の根絶、技術者のスキルアップ・主要資格取得者の増強と並び、死亡災害ゼロを盛り込んだ。
 準大手クラスでは鉄建が工事の安全レベルの抜本的な向上を最優先課題に位置付け、協力会社を含めた安全教育の充実、安全を担う人材育成の強化に力を注ぐ。西松建設は17年度に建設業界トップクラスの安全成績を達成し、20年度には安全のコーポレートブランド化を目指すという目標を打ち出している。
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