2015年5月19日火曜日

【新市場】エネルギーと環境 ZEB、EMS、水素

◆ZEB “元年”見据え技術開発にしのぎ
 政府が2014年4月に閣議決定した第4次エネルギー基本計画では、20年までに新築の公共建築物など、30年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現を目指すことが明記されている。ゼネコン各社では、省エネルギーからゼロエネルギーへの転換期を絶好の商機ととらえ、新たな需要を取り込むための動きが活発化しており、来るべき“ZEB元年”を見据え、提案力強化に向けた技術開発にしのぎを削っている。写真は大成建設の「ZEB実証棟」。

 民間調査会社が14年7月にまとめたZEB市場に関する調査では、竣工ベースの国内市場規模は15年度の179億円から、30年度には7059億円に拡大すると予測している。11年度からは国の補助金制度も創設され、ゼネコンなどによるZEB化の技術開発、実証試験などを後押ししている。
 大成建設は14年5月に横浜市の同社技術センターに「ZEB実証棟」を完成させた。都市型ZEBの実現と、働きやすく快適な空間の両立をコンセプトにノウハウを蓄える。大林組は14年3月、技術研究所(東京都清瀬市)の本館テクノステーションで、ソースZEB化工事を完了し、年間のエネルギー収支ゼロに向けて取り組んでいる。
 山梨県北杜市で設計施工した生長の家の「森の中のオフィス」でZEBを具体化した清水建設は、平常時の節電・省エネルギー対策と非常時のBCP対策を両立する施設づくりを実現する「ecoBCP」を積極的に提案し、既に複数施設でecoBCPのコンセプトに基づいた施設が完成している。
 竹中工務店は、20年にZEBのリーディングプロジェクトの実現、30年にZEBの定着を目指して技術開発などを進めている。30年以降にはネット・プラスエネルギービルの実現を目指す。
 実物件に適用した技術は大きな成果を上げている。20年に自社設計施工の新築ビルでZEB第1号の実現を目指す鹿島は、東京・赤坂にある同社KIビルの一部をZEB化改修し、大幅な省エネ化を達成した。五洋建設は、本社別館(東京都文京区)に導入した複数の省エネ技術の効果を約1年間かけて検証した結果、標準的な建築物に比べ44%の省エネ効果を確認している。西松建設は、都内の有料老人ホームにZEB設計技術確立を目指した技術を導入、得られた実証データを検証することで高齢者施設などの省エネ設計・提案に役立てる。
 安藤ハザマは、20年までのZEB実現に向け、「環境総合提案力」をより強固にするため、組織横断チーム「EMIT-20」を編成。13年度に、50%省エネビル(ハーフ・エネルギー・ビル)をモデル化している。コンパクトオフィスにおけるZEB100%モデルの構築も検討しており、15年度からの展開を目指す。
 ZEB実現に向けた要素技術の開発も着々と進んでいる。戸田建設は、太陽光パネルで発電した直流を、そのままLED(発光ダイオード)照明や携帯電話の充電装置に供給し、電力変換ロスを少なくするシステムを技術研究所本館の既存太陽光発電システムに導入した。変換時のロスが少なく、既存システムと比較して約10%の省エネ化が見込める。

◆EMS クラウド技術の動き顕著
 住宅や商業ビル、公共施設といった多様な施設で導入が検討されているエネルギーマネジメント技術。技術の制御をクラウドサービスで実施しようとする動きが目立ってきた。インターネット環境があれば遠隔から対応できたり、複数建物の一元管理も容易になるなどのメリットがあり、各社がサービスの販売や機能拡充に乗り出した。
 アズビルもその一つで、ビルのエネルギー管理や設備管理の効率化、室内環境の快適化などを実現するクラウドサービスを4月から販売する。ビル全体のエネルギー使用量の一元管理やテナントへの情報開示、省エネへの取り組みなどが管理者に求められる中、同社が導入しているビルディングオートメーションシステムとクラウドセンターを専用回線で接続し、建物のエネルギー使用量や設備の運用データを一元管理する。複数の建物のデータ比較や省エネ効果の比較検証もできる。
 富士通や沖電気工業は日本大学、北陸先端科学技術大学院大学と連携し、技術の実証を進めた。住宅や店舗、学校に設置したセンサーや機器をネットワークに接続し、消費電力の削減や蓄電池の活用によるピークカットなどを自動制御。クラウド環境で多様な機器の情報を取得して制御すれば、1000戸の住宅や学校のあるコミュニティーで従来より約20%のエネルギーが削減できることが実証された。

◆水素 ステーション100ヵ所整備
 水素エネルギーは、利活用を大きく広げることで、省エネルギー、エネルギーセキュリティーの向上、環境負荷低減に大きく貢献する可能性がある。家庭用燃料電気や燃料電池自動車によって利用が本格化し、将来は燃料電池建機や燃料電池鉄道車両、水素発電、業務用燃料電池など用途は多様になるとみられている。政府のエネルギー基本計画にも「水素社会の実現に向けた取り組みの加速が必要」とされている。
 当面は、燃料電池車に水素を補給する「水素ステーション」整備を加速させる。ことし2月末時点で水素ステーションは9カ所しかなく、36カ所が整備中だ。これを2015年度中までに首都圏、中京圏、関西圏、北部九州圏の4大都市圏を中心に100カ所の整備を目指す。
 標準的な整備費は現在、土木工事費7000万円、機器工事費5000万円など計4億6000万円。この整備コストを20年ごろまでに半減させるため、政府はさらなる規制緩和、技術開発、標準化の施策を進める。
 自治体の取り組みも進む。下水バイオマスや太陽光発電などを活用して、燃料電池に使ったり、水素を製造している。自治体と企業が連携して低炭素な水素利活用統合システムの地域実証も15年度に始まる。水素の製造・輸送・貯蔵・利用を地域ぐるみで取り組む。水素社会実現に向けた一歩でもあり、燃料にも電気にもなる水素は、今後のまちづくりの中でも使われるようになることは確実だ。
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