2015年5月25日月曜日

【産業界の動向と展望】設計・人材の確保・育成へ設計界の知恵もさまざま INA新建築研究所、フリーランチ


■INA新建築研究所 「クレド」作成し企業風土と文化の継承図る
 INA新建築研究所では、社員向けの行動指針「クレド」の作成を進める。目指すのは、技術研修では伝えきれない企業風土、文化の継承だ。
 経営理念とは異なるもうひとつの企業理念づくりに着手した理由について片桐裕明社長は、「トップダウンではなく、ボトムアップの理念づくりが必要だ」と語る。経営陣ではなく社員が中心となった理念づくりを進めるため、クレド作成に際しては、全社員を対象にアンケートや聞き取り調査を実施し、それぞれの持つINA建築研究所「らしさ」を探った。写真はクレド作成の様子。

 重視しているのは、社員のモチベーションだ。建築設計事務所の業務は多様化と複雑化を続けているが、「社員の思いから高いモチベーションが生まれ、それが仕事の品質を高め、顧客の満足につながる」という基本は変わらないと片桐社長。クレドを通じて社員の一体感を高めたいという。
 策定委員会に参加した設計部主管の若狭諭氏は、「社員研修によって技術を伝えることはできる。しかし、クレドを作成することはINA新建築研究所らしさを自覚し、先輩から伝わってきた思いを次の世代に継承するきっかけになった」と振り返り、「重要なのは、クレドを作成したという経験だ」と強調する。クレドの文言を完成させたことに加えて、アンケートや聞き取りをした経験があることで全社員が持つそれぞれの思いを共有できたからだ。
 今後は、クレド作成の経緯を知らない社員も入社することになる。若狭氏自身、クレド作成の経緯を知る社内の「語り部」として、社内研修では伝え切れない思いを伝えていく考えだ。

■フリーランチ 設計者に自由な働き方を――市場価値自覚、雇用形態を最適化
 早朝から深夜まで図面を描き、徹夜も泊まり込みも辞さない--そんな設計者の労働環境を「働きかた」から改善しようとする動きがある。人材紹介事業を展開するフリーランチ(東京都中央区)は、建築・不動産企業に特化した人材紹介を3月から本格的に開始した。特殊技能労働者と企業のマッチングを支援し、技能者は時間の束縛が少ないフリーランスとしてキャリアに応じた雇用形態やプロジェクトで働くことができる。
 「フルタイムで働くだけでなく、ライフスタイルに合わせた働きかたがあっても良い」と、納見健悟代表取締役は語る。「育児のために大手組織設計事務所を退職したが、時間の束縛の少ないフリーランスとして自分のスキルを生かしたい」「仕事をしながら、NPO活動をする時間を確保したい」--。そんな多様な働きかたへのニーズは増加しているという。
 一方で、雇用する企業側からの関心も高まっている。施主のニーズが多様化し、建築設計事務所に求められる能力も変化する中で、必要な技術や知識もプロジェクトによりさまざまだ。
 そうした新たなノウハウが必要になった際に、新たな人材を正社員雇用するのではなく、フリーランスへ一時的な業務委託をすることは生産性向上と人材採用コストの削減という大きなメリットとなる。
 長時間労働が半ば常態化した建築設計業界だが、建築設計という特殊技能が持つ市場価値を自覚することで、より満足度の高い働き方も実現できると納見氏は指摘する。その上で、雇用形態を最適化することで「建築分野でもっと多様な働き方は実現できる」と強調する。

■士会連合会 管理技術者講習を開始、設計と施工の連携目指す
 日本建築士会連合会(三井所清典会長)は、7月ごろから建築分野に特化した管理技術者講習を開始する方針だ。三井所会長は、「まちづくりのようなソフト的な活動だけでなく、設計者とゼネコンの関係やゼネコンと専門工事業者との関係についても、日本建築士会連合会は目を向けなければならない」と指摘する。
 設計者の団体として目されてきた同会が施工分野の教育に着手する背景には、 設計者と施工者の議論の場を築こうとする狙いがある。 改正品確法や改正士法により設計者・施工者を取り巻く環境が大きく変化しようとする中で、 「長年にわたる建設業の歴史の中で築き上げられた設計者と施工者の認識のずれを埋めなければならない」 とし、設計者と施工者のあるべき姿を示す必要性があるという。
 施工分野で働く建築士への教育は、 そのための第一歩だ。日本建築士会連合会という場に施工と設計という、それぞれの領域で働く建築士を巻き込むことで、 「これからどういう関係を構築していくべきなのかを考えなければならない」と強調した。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿