2015年5月21日木曜日

【公共発注者にも広がる技術者不足】技術系職員 高まる役割

建設業界で課題となっている担い手確保・育成問題は、公共発注者にとっても同様の課題だ。長期にわたる財政抑制を受け、自治体職員数の減少も余儀なくされる中、従来の新設発注だけでなくインフラの老朽化対策、維持管理・修繕、さらには公有財産の最適活用など新たな業務への対応にも迫られている。いま、自治体は技術系職員不足をカバーしながらどのような対応をしているのか。規模別の自治体ルポとともに、ニーズが高まる発注者支援につながるキーワードも提示する。写真はゲリラ豪雨に対応する大規模事業「白子川地下調節池」を担当する第四建設事務所。
◆土木・建築部門の職員数、多くの自治体でいまだ不足 役割さらに大きく
 自治体にとってここ数年は、将来のまちづくりを描き、その実現に向けた地域の活性化策や再生策を固める重要な時期となっている。少子化・高齢化・人口減少が進む中で、生き残り策の検討・作成は待ったなしといえる。各自治体は、国土強靱化の地域強靱化計画、地方創生の地方版総合戦略、インフラ長寿命化の公共施設等総合管理計画(インフラ長寿命化行動計画)の策定が求められている。また、将来のまちを支えるインフラ・公共施設は、新設から維持管理・長寿命化対応にシフトする。
 このため、計画・戦略の策定、インフラ長寿命化対応などにおける自治体技術職員の果たす役割は今後より大きくなる。技術職員数を増やす動きは徐々に出ているものの、多くの自治体はいまだ土木・建築部門の職員数が不足している。
 インフラ・公共施設が新設から維持管理・長寿命化対応に変容してきていることは、自治体予算を見ても分かる。予算の歳出種類の1つである投資的経費は長く減り続け、2014年度に13年度の見込額を上回って増加に転じ、15年度は14年度から微減した。これに対し維持補修費は、投資的経費よりも早く12年度から前年度見積額を上回り、15年度で4年連続の増加となっている。
 公共建築物や土木構造物の維持補修費は、自治体全体の歳入と歳出の総額を見積もる通常収支分の歳出種類のうち、投資的経費と維持補修費の2つに計上されている。投資的経費は地方債による事業、維持補修費は税金や交付税で実施する事業の歳出額を計上する。起債するかしないかの違いであり、借金での事業か、キャッシュで事業費を手当てするのかで区分される。
 特に15年度自治体予算のうち、投資的経費とは別計上の維持補修費は、 前年度比12.0%増の1兆1601億円が計上された。 「15年度から公共施設の長寿命化時代に対応する歳出見込額とした」 (総務省)ことが理由だ。
 維持補修費は、毎年度の見積額に対し決算額が上回る状況が続いている。自治体はいま、見込額以上に税金・地方交付税を投じて、土木を含む公共施設の維持補修を実施しているのだ。
 こうした予算の推移は、新設投資額が今後も減り、長寿命化対応や集約、除去への予算が増える傾向が強まることを示している。自治体の技術職員も、長寿命化対応への技術力を備えることが求められているといえる。

■技術系職員密着ルポ 東京都でも発注業務に支障が

白子川地下調節池の工事現場。比丘尼橋上流調節池、同下流調節池を含む白子川調節池群の工事が完了すれば、全体で約45万トンもの貯蓄が可能となるb
東京都では現在、土木・建築・機械・電気の4職種で3027人の技術系職員が働いている。最も多かったのは1992年の4774人。この年をピークに徐々に減少し、2011年には2772人まで減少したが、ここ数年は微増が続いている。老朽化が進む社会インフラの整備、東日本大震災の発生とそれに伴う防災意識の向上、20年の東京五輪に向けた整備などが契機となっているようだ。

◆採用・育成に力を入れる
 近年の事業量の増加に対応するため、 採用した人材を早急に戦力として活用できるよう、 都では技術系職員の採用・育成に力を入れている。
 採用面では、一般的な公務員試験で行われる専門試験と論文を廃止し、プレゼンテーションやフィールドワークなどで選考する新方式を開始。初年度となった14年度には、約200人の申し込みがあった。
 育成面では、入庁1-4年目の職員を対象に、直属の係長が指導する「テキスト研修」を実施。新人に知識を提供すると同時に、係長は知識の研さんとなるため、効果を期待している。 「白子川地下調節池」の整備を担当している第四建設事務所では、豊島区、板橋区、練馬区の道路・河川の維持管理と整備を行っており、都の長期ビジョンに位置付けられている特定整備路線や白子川地下調節池等の事業も所管している。

◆第四建設事務所(「白子川地下調節池」の整備担当)では他部署との連携・協力でカバー
 白子川地下調節池の整備を担当する同整備係は、土木2人、機械、電気設備、建築各1人で工事の設計や監督を担当しており、現場で監督指導に当たる工事担当が2人の計7人で組織されている。
 限られた人材で業務を実施するため、「工事監督補助業務委託制度」の活用や他部署との連携・協力などでカバーしている。
 都では少数の職員で事業を進めるため、「積算補助委託制度」なども実施している。積算システムの電子化やこれらの補助制度を活用することで業務の効率化を図っていることから、「業務量に応じた人員は何とか確保できている」と感じているようだ。
 一方で最少人員となっていることから「緊急時などに対応できる予備的な人員が確保できない」と不安をのぞかせる。
 特に土木以外の機械・ 建築等の担当者は一人しかいないため、 体調不良などで出勤できないときは、他部署から応援してもらうことになる。
 今後そういった事態になる可能性もあるため、「人員は多いに越したことはないが柔軟な組織運営が必要」と話す。
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