2015年5月25日月曜日

【産業界の動向と展望】コンサルタント 人材育成・社員教育・シニア活用・女性・ワークライフバランス

◆人材育成 研修施設、企業内大学で成果
 建設コンサルタントにとって最大の経営資源は人材だ。各社とも技術力などのアップに向け、人材育成に大きなウエートを置いている。写真は建設コンサルタンツ協会関東支部の新入社員研修。
 いであは、自前の研修施設を山梨県山中湖村に所有しているが、参加できる人数が限界になってきたため、現施設の近くに新たな研修施設の建設用地約1万㎡を確保した。新施設は、宿泊者数が現施設の約2倍となる50人に増え、2016年春の完成を目指して設計などの準備を進めている。2つの施設を利用すれば、一度に多くの社員が参加できるため、プログラムの内容も多様化が可能となる。

 プロポーザル方式や総合評価落札方式といった技術競争に対処するため、階層別研修に加え、10年から専門分野ごとの専門技術研修をスタートした。現在は、10-20人のグループが週末に2泊3日で研修を受けている。実施した技術部門数は、14年が前年よりも3部門多い12部門で、延べ参加者数は約70人多い約300人だった。研修できる期間は4-11月のため、現施設ではこの人数が限界だ。
 研修の成果として、国土交通省の業務評定点は10年度の平均75.5点が13年度は77.0点、プロポーザルの特定率は10年12月期の23.6%が14年12月期は35.9%に上昇していることに表れている。また、チームワークの向上、社内コミュニケーションのアップといった効果も出ている。
 パスコは、次世代のリーダーを育成するため、企業内教育の場として「PASCO大学」を、10年度から開校している。事業の多角化と領域の拡大、世界市場をにらんだ人材育成が目的で、社長自らが総長を務め、講師は社長や役員、各部門のトップ技術者が教鞭を執る力の入れようだ。
 講義は1回90分で年間47回。仕事は通常通りこなさなければいけないことと、地方からも参加できるように、講義は原則として休日に行っている。カリキュラムは授業を聞くだけでなく、グループに分かれて主体的に取り組む課題解決ワーキングがある。ワーキングは、本当の大学では報告書を作成すれば終わりだが、企業のため具体化することが求められている。
 また、幹部候補生の育成を想定したPASCO大学院を、15年度後半に創設するため準備を進めている。

◆社員制度 限定制度設け多様化に対応
 人材と技術が経営資源のすべてと言ってよい建設コンサルタント業界にとって、優秀な人材が集まる魅力ある職場の構築は必須の課題だ。建設技術研究所は、(1)優秀な人材の確保と社員の定着(2)社員のワーク・ライフ・バランスを支援する(3)社員の多様なキャリアプランに応える--ことを目的に、多様な正社員制度として限定正社員制度を7月から導入する予定だ。
 検討しているのは、「勤務地限定社員制度」「勤務時間限定社員制度」「職務限定社員制度」の3つ。勤務地限定社員制度は、総合職社員を対象に、地域に根ざした生活設計を支援するもので、転勤を免除し、同一本支社管内での勤務を許容する。若年層の社員が離職する大きな理由の1つに、地元志向が強いこともあるため、そこにも対応する。
 勤務時間限定社員制度は、同じく総合職を対象として、社員のワーク・ライフ・バランスを支援する。業務量を軽減した一定時間内での勤務を許容するもので、残業をなくし定時の退社を促す。
 職務限定社員制度は、13年の改正労働契約法の施行を踏まえ、高度な専門的技術を持つと会社が認めた契約社員や、アルバイトを正社員化する。人材の安定的な確保と本人の勤務意欲の向上を促進する。いずれの制度も労働組合との調整と社員説明を行い、合意が整った段階で7月からの導入を目指している。
 一方、多様な人材の採用について、大学の推薦枠設定を14年度から復活させた。推薦枠を設けることで大学側、企業側とも就職先と採用人数の確保を目指す。同じく14年度からは新たに外国人留学生採用制度を制定し、ことし4月に2人を採用した。一般枠での外国人留学生の採用とは違い、日本語が不自由な面があるが、同社の負担で1年間日本語学校に通わせることで、日本語を習得してもらい、国内の通常業務になじんでもらう。その後は海外での勤務を選択肢として考えている。
 また、インターンシップ運用要領を制定した。一昨年までは各事業所ごとに対応していたが、全社的に研修契約やメニューを統一し、インターンシップで来た学生を採用に結びつけたい考えだ。14年度は45人に研修を受けてもらったが、15年度は人数を拡大する予定だ。これら制度を活用することで、新卒者の採用が厳しくなっている中、優秀な人材の確保に結びつける方針だ。
 同社は、13年4月に生産構造改革本部を設置。魅力ある職場の再構築など3テーマに取り組み、2年間の活動期間を終了した。制度設計の枠組みはできたことから、今後は主担当組織が運用面を担当していく予定だ。

◆シニア活用 e-ラーニングで修了者登録
 若手技術者の確保・育成に企業が苦慮している中で、日本測量協会(村井俊治会長)は、シニア層の活用に向けた支援策に取り組む。おおむね60歳から70歳の退職者か退職予定者を対象に、技術的な実績を持ち、就業機会を希望する測量技術者に「e-ラーニング」を使った技術研修を実施し、修了者を登録する。本人の合意のもと、特別会員の企業に紹介し、再雇用を促す仕組みだ。技術研修は5月11日から開始する。
 「シニア層の就業機会の増加」「測量技術の伝承」「大規模災害時の支援」など、測量技術の発展と社会への貢献を目的として実施する。
 同会の正会員は約9600人。このうち、60歳以上は約2200人で、22%程度を占める。うち60歳から65歳が58%と最多で、66歳から70歳が26%、70歳以上が16%となっている。瀬戸島政博専務理事は「体力と気力が充実しているのなら、働くことのできる機会をつくり、サポートすることが重要だ」と力を込めている。
 技術研修はすべてe-ラーニングで行う。受講資格は、測量士かつ同協会の会員で、地理空間情報専門技術者の資格を持つ者か、同等以上の専門技術を持つ者とする。ガイダンスは、地理空間情報活用推進基本法の概要、地理空間情報と品質管理、地理空間情報とその利用、測量技術者のための管理技術、分かりやすいプレゼンテーションの方法、最新の公共測量「作業規定の準則」の概要と要点の6部門。受講可能期間は4カ月間となっている。試験もe-ラーニングで行い、800字程度のレポートもメールで提出してもらう。
 合否の確認後、修了を通知し、特別会員に限定して紹介する。企業の要望があれば、本人と連絡を取り、再就職に向けて話し合ってもらう。瀬戸島専務理事は「経験の占める部分が大きいので、定年で辞めて全然違う世界に行ってしまうのはもったいない。人づくり・人材育成の役割を果たしたい」と意欲を示すとともに、「若い人とシニアが一緒に働き、技術を伝承する部分がいままで以上に重要になる」と話し、企業の人事や総務といった部署にも積極的に情報発信していく考えだ。
 一方、「日本測量協会フェロー制度」も創設。測量界の“極め人”と周りが認めたシニアに対し、経歴書を書いてもらい、外部の評価委員会による審議を経て、「日本測量協会フェロー」を授与する。おおむね65歳以上が対象で、協会活動や、G空間EXPO、イノベーション大会などで、これまで培った技術、経験、知識を協会活動に生かしてもらうことを検討している。
 同協会は「女性の技術力向上部会」を創設するなど、女性や若手の確保・育成にも力を入れている。

◆女性 課題解決へWG立ち上げ
 オリエンタルコンサルタンツは、女性社員がライフステージに応じた働きやすく活躍できる職場環境をつくるため、「女性社員の働き方検討ワーキング(WG)」を立ち上げている。女性管理職がWG長となり、各支店の女性を含め総勢12人で構成している。
 入社2年目くらいの新人社員や未婚者、既婚者、出産経験者など多様な人材がメンバーとなっている。設置したのは昨年10月。12月にプレワーキングを実施した後、ことし1月に全女性社員にアンケート調査を実施し、問題・課題点を共有した上で、2月と4月に会合を開いている。
 女性社員が定着するための問題を踏まえながら、さらに活躍していくためにはどのようにすればよいか「定着と活躍」の視点で検討を進めている。外部コンサルタントの知見も得て、他業種の先進事例なども参考にしながら検討している。
 WGでは、「女性社員間のネットワークが充実していない」「幹部職のサポートが十分ではない」「制度自体はあるが十分に理解・浸透されていない」「今の制度の改善が必要」「多様な働き方の活用の取り扱いを明確にしないといけない」といった意見が出ているが、これら課題の解決へ具体的な改善策を練っていく。
 WGは、経営陣を交えたディスカッションの場を月に1回ほどのペースで設けており、同社は今期(2015年9月期)中に一定の成果を出し、10月から実践していきたい考えだ。WGは来期以降も存続するかは未定だが、女性社員の定着と活躍に向けた活動はそれ以降も続けていく。

◆WLB(ワーク・ライフ・バランス) 人事施策を総合的に見直し

 若手の確保と中途退社を防ぐため、長時間労働の改善を中心としたWLB(ワーク・ライフ・バランス=仕事と生活の調和)が、業界で喫緊の課題となっている。
 長大は、優秀な人材を確保するには働く環境の改善や福利厚生の充実、待遇改善が不可欠と判断、ことし2月から現行制度などを総合的に見直す作業に着手した。小手先ではなく、真に効果が発揮できる改革とするために、社長が委員長を務める「新たな人事施策を考える委員会」を設置。女性の活躍促進や介護支援策、高齢者雇用制度の再検討と並んで、長時間勤務解消も4つのワーキング・グループ(WG)の1つとして検討している。
 WGは事業部長が座長を担当、部長と5-10年の若手で構成する。また、管理部門だけでなく技術や営業の現業部門のほか、支社からも参加、“絵に描いた餅”ではなく実効性がある制度や規則を目的としている。今期(2015年9月期)末までを第1ステップとして望ましい姿を明確にして、来期は制度や就業規則などに落とし込み、具体化を図る。
 業界の中では、比較的早い時期からWLBに取り組んできたパシフィックコンサルタンツ。10年度から3年間、東京都の「働き方改革」東京モデル事業に採択され、長時間労働解消などに力を入れてきた。具体的には、チーム内のスケジュールなど情報を共有することでお互いに助け合うことや、上司による指導と本人の意志改革を行ってきた。
 この結果、1年で最も忙しい3月に残業が100時間を超える社員は、約1600人のうち数年前までは200人程度いたが、14年は48人、15年は6人と激減した。WLBは浸透してきていると評価、今後も継続する。
 今期からスタートした中期経営計画「経営方針2016」は、働き方の改革戦略を5本柱の1つに据えている。IT基盤や社員の意識も含めたビジネスプロセスを改革するため、5月にWGを設置して検討を始める。
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