2015年5月15日金曜日

【プレーヤーの動き】コンサルタント 追い風受け業績に明るさ

◆市場低迷備え攻めの積極策に転換
 売上高の8割程度を公共事業が占める建設コンサルタントは、民主党政権時代に公共事業の大幅減という厳寒期を余儀なくされた。自民党に政権交代後は、アベノミクスによる公共投資の大幅出動により、震災復興はピークアウトしたものの、国土強靱化の取り組み、インフラの維持・管理などを背景に、各社の業績にも明るさが戻り、積極的な経営路線を打ち出している。

 業界最大手の日本工営は、2021年6月期に連結売上高を1000億円とする目標を掲げていたが、2月に発表した長期経営戦略で400億円上積みして1400億円に引き上げた。上積みした400億円は、M&A(企業の合併・買収)と事業投資型ビジネスによる増収を想定している。
 建設技術研究所は、現在のグループ長期ビジョンで、15年12月期に売上高500億円を掲げているが、4月中旬にも公表する現行のグループ中長期ビジョンに代わる次期ビジョンでは、25年に国内500億円、海外100億円の受注目標600億円を目指す。また、グループビジョンを踏まえた取り組みを具体化するため、中期経営計画の策定にも着手する。
 オリエンタルコンサルタンツを中核とするACKグループは、14年9月期の売上高348億円に対し、17年9月期は420億円に目標を設定した。また、昨年6月にはオリエンタルコンサルタンツの海外事業部門であるGC事業本部を分社化し、オリエンタルコンサルタンツグローバルを設立した。中長期的な数値目標は、15年が受注高130億円、営業利益率1.8%、20年が180億円、4.0%以上、30年が350億円、4.0%以上に設定している。海外拠点、現地法人などの強化により、グローバルな人材による多様なサービスを展開していく。従来のODA(政府開発援助)、コンサルタント業務だけでなく、新たなグローバルビジネスにも挑戦する考えだ。
 パシフィックコンサルタンツは、14年10月から3年間の中期経営計画で、中計は最終17年9月期の売上高(単体)を400億円程度とし、3カ年とも経常利益を25億円以上確保することを目標としている。新たな領域に参入するとともに、今後公共事業の大幅な伸びは期待できないことから、14年9月期の売上高(同)、経常利益(同)よりも数値を低めに設定している。20年のグループ全体売上高500億円を掲げた長期計画に変更はない。ハードだけではなくソフトも含めたインフラサービスの官から民への流れを見据え、既存のコンサルティング事業だけではなく、エンドユーザーにかかわる部分に積極的に参画していく方針だ。
 各社とも現在のような公共事業の大幅な伸びは、今後期待できないという見方で一致している。中長期的には市場環境が厳しくなることは覚悟せざるを得ず、新領域の拡大や海外展開など、いまのうちから攻めの積極策を打ち出し、来るべき事業の縮小を乗り切ろうという経営戦略が活発化している。

◆中途退職、人材確保は喫緊の課題
 建設業界共通の課題でもある人材の確保・育成が重くのしかかっている。建設コンサルタンツ協会の大島一哉会長は、2015年新年賀詞交歓会で「担い手の確保・育成に従来より力を入れて活動を進めていきたい」と強調した。「高齢化は経営面では高コスト体質、技術面では技術の継承に大きな問題を抱える」と訴え、職務環境の改善や技術の向上に取り組む姿勢に力を込めた。

◇長時間労働改善へ一手 水曜日ノー残業デー
 建設コンサルタント業界は、業務量の増大に伴う長時間労働の常態化による社員の中途退職など、人材の確保・育成が大きな課題となっている。このため、建コン協は、象徴的なイベントとして昨年10月の全水曜日(合計5回)を対象に実施した協会全会員による一斉ノー残業デーを実施した。
 調査結果では、定時後1時間以内の退社率の平均は、79.4%と8割近くに達し、昨年6月に実施した会員企業19社実施時の86.9%には達しなかったものの、会員企業全体の長時間労働の改善への意欲をうかがわせる結果となった。ことしは6月と10月の2回を予定しており、取り組みを継続していく方針だ。企業によっては、ノー残業デーを通年で実施しているところもあり、労働環境の改善に向けた取り組みも広がりつつある。
 また、発注者側が適切な工期の設定や年度末に集中する納期の是正、年度をまたぐ繰り越しの柔軟な運用など、コンサルの仕事の効率を図る措置に配慮することも必要不可欠だ。公共工事品質確保促進法(品確法)の改正では担い手の確保・育成が発注者責務として明記されている。多様で優秀な人材が集まる魅力のある業界の構築に向けて、官民が一体となった取り組みが求められている。
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