2015年5月19日火曜日

【新市場】エネルギーと環境 石油コンビナート、無電柱化

◆石油コンビナート 巨大地震の液状化から守る
 経済産業省が2014年6月にまとめた調査結果によると、巨大地震が発生した場合、製油所などコンビナートで予想される被害は、首都直下地震で25%、南海トラフ巨大地震で43%の地点が「液状化の危険度が極めて高く、対策が不可避」とされた。東日本大震災を契機に臨海部コンビナート施設における液状化への懸念が指摘されていたが、調査結果は、巨大地震への備えとなるコンビナートの強靱化を早急に進める必要性があることを示した。写真は「無電柱化民間プロジェクト」実行委員会。

 調査は、現在の法律で定めた基準を超える揺れが起きた場合の被害予測を把握。首都直下地震と南海トラフ巨大地震が発生した場合に被害が想定される東京湾など関東地区2827地点と、伊勢湾など中部地区と大阪湾など近畿地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区3327地点の製油所や化学工場など25事業所6154地点を、各社が実施した点検結果を基に評価した。
 その結果、東京湾など関東地区で液状化危険度が極めて高いのは25%の707地点となった。液状化危険度が高いと評価された836地点を加えると1543地点となり全体の54.6%を占める。一方、南海トラフ巨大地震を想定した伊勢湾以南では、液状化危険度が極めて高いと判定されたのは43.3%の1441地点で液状化危険度が高いと判定された757地点を加えると2198地点、61%に上った。
 この調査結果を踏まえ、14年7月に総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)資源・燃料分科会の石油・天然ガス小委員会は、今後のエネルギー需給動向を踏まえた政府の資源・燃料政策の方向性を示した中間報告書の中で、巨大地震により石油精製設備が長期停止している間でも、製油所内の在庫やほかの製油所からバックアップ供給を受けた在庫を出荷する機能を継続・早期回復できるよう、官民連携により石油供給インフラの強靭化を進めるべきだと指摘した。
 経産省は、中間報告書を受け、「石油コンビナート事業再編・強靱等推進事業」を立ち上げ、14年度補正予算に95億円、15年度予算案に115億円を計上した。
 同事業では、アジア諸国の石油コンビナートとの激しい国際競争と巨大地震危機への備えの2つの課題に直面する石油供給インフラについて、生産性と危機対応力の向上に役立つ取り組みを進める。具体的には、事業再編・統合運営による設備の廃棄・増強・共用化を通じた生産性向上を目指す「コンビナート設備最適化」に向けた投資などの支援に45億円を充てる。165億円が首都直下地震などによる地震動・液状化・側方流動による被害に備えた、石油供給インフラの被害最小化と早期の石油供給回復に必要な「製油所などの強靭化」投資への補助となる見込み。
 強靱化投資を行う企業への補助は、製油所の出荷設備を稼働させるための非常用発電機、ドラム缶石油充填出荷設備が定額(100%)。製油所における設備の緊急安全停止対策(配管の緊急遮断弁やタンカーの自動離桟装置の増強)、石油製品の入出荷設備の耐震強化・液状化対策・バックアップ用能力増強・早期機能回復への準備(桟橋・背後護岸や構内配管などの強化、入出荷ポンプ・タンクローリー出荷レーンの増強など)は、補助額上限を設けず、投資額の3分の2を補助する。
 事業は5年間の時限措置。公的支援でコンビナートの強靱化を早期に進め、災害時対応力を向上させる。
(※)PL(液状化指数)による判定法
周辺地盤全体に液状化による被害が発生するか否かの目安とする方法。
PL値と液状化の程度の区分は、一般的には岩崎ら(1980)による区分を用いて判定。
PL値による液状化判定
PL=0    :液状化危険度は極めて低い。液状化に関する詳細な調査が不要
0<PL=<5 :液状化危険度は低い。特に重要な構造物に対して、より詳細な調査が必要
5<PL=<15 :液状化危険度が高い。重要な構造物に対してはより詳細な調査が必要。液状化対策が一般に必要
15<PL    :液状化危険度が極めて高い。液状化に関する詳細な調査と液状化対策が不可避
(出典:岩崎敏男、龍岡文夫、常田賢一、安田進:地震時地盤液状化の程度の予測について、土と基礎Vol.28、No.4、p23-29、1980)

◆無電柱化 低コスト手法導入が焦点
 都市の防災や景観など幅広いメリットを持つ「無電柱化」への取り組みが新たなフェーズに入る。焦点は、電線共同溝方式に代わる無電柱化手法として注目を集める直接埋設方式など、低コスト手法の導入だ。国土交通省は既に「無電柱化低コスト手法技術検討委員会」(委員長・秋葉正一日大教授)を設置して、ケーブルを埋設する深さや電線と通信線の離隔など、技術基準の検討に着手。低コスト手法の活用に向けた環境整備に踏み出している。
 無電柱化の推進に向けて、国交省が推進方策として挙げるのは、道路の新設や拡幅を行う際に道路整備と無電柱化の同時施工を促す同時整備の実施、防災上の優先度が高い緊急輸送道路に限定して義務占用物件である電柱の新設を制限する「占用制限」の発動、低コスト手法の導入など。
 中でも注目を集めるのが、ロンドンやパリといった無電柱化先進都市で採用される直接埋設方式の導入だ。
 その最大のメリットはコストにある。現在、日本国内で主流となっている電線共同溝方式が電線共同溝本体(土木工事)に1㎞当たり約3億5000万円かかるのに対して、直接埋設方式は1㎞当たり約8000万円(試算)。費用という側面で見れば、道路管理者と電気事業者の双方にとってメリットは大きい。
 しかし、日本での導入実績がない直接埋設方式は、現段階では道路管理者と電気事業者の費用負担など、ポイントとなる費用面の問題が不透明な状況。仮に電気事業者などに過度な負担がかかるようなことになれば、普及拡大は望めない。
 国交省は、実際の施工性の検証などを重ねながら、6月をめどに「無電柱化低コスト手法技術検討委員会」における各実証試験の結果と安全対策案をとりまとめる。この実証実験の先に、次の段階として道路管理者と電気事業者の費用負担の仕組みや具体的な支援策のあり方も検討していく見込み。
 事業者に過度な負担がかからない費用負担の枠組み、事業者への支援策など、低コスト手法の推進体制を敷くことで「無電柱化」への取り組みを加速させていく。

◆民間、自民党も積極姿勢

 防災や景観など幅広いメリットを持つ無電柱化を推進する「無電柱化民間プロジェクト」実行委員会(委員長・絹谷幸二大阪芸大教授)は、11月10日を「無電柱化の日」に制定。民間の立場から無電柱化を支援する。道路に立つ電柱(1)がゼロ(0)になるという思いを込めた。
 公式キャラクター「無柱(むちゅう)君」で一般への理解を浸透させる活動も展開中だ。
 また、無電柱化の基本理念となる無電柱化推進法案(仮称)のとりまとめを担う自民党も無電柱化への積極姿勢を鮮明にしている。小池百合子委員長は「かつてクールビズでネクタイをとらせていただいた。今回は無電柱化で電柱を引っこ抜いてまいりたい」と意気込む。
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