2015年5月18日月曜日

【プレーヤーの動き】メーカー 単品売りからの脱皮 多品種化、パッケージで差別化

◆付帯部分に力点
 単品売りからの脱皮--。これは建設産業を相手に活動するメーカー各社にとって、今後到来する国内建設市場の縮小時代を生き抜くキーワードに他ならない。市場サイズに合わせて事業規模を縮小する生き方では成長はない。売り方や立ち位置を工夫することで事業拡大を狙う攻めの経営がそこにある。各分野に点在する兆しを追った。写真は製品開発のあり方を大部屋方式に変更した岩崎電気。

 積水化学工業の環境ライフラインカンパニーが主力の樹脂加工品販売を製品別から分野別に切り替えている。製品販売を軸に置き、その川上領域と川下領域にビジネス領域を広げるVC(バリューチェーン)戦略にかじを切った。高下貞二社長は「枠組みは整った。次は収益の見える化を形づくっていく」と先を見据えている。
 建設系の製造メーカーは分野を問わず、自らの製品を売る一環として設計に協力したり、施工時には取り付け作業を支援したり、川上段階や川下段階に無償で製品の付帯サービスを進めている。製品販売につながる付帯部分に商売の力点を置くことで、製品の採用率は格段に高まる可能性を秘めている。
 「あくまでもトータルな部分にこだわる」と、内田洋行の大久保昇社長が力説するのも、考え方は同じだ。公共やオフィスなどに什器を販売する中で、各分野の共通ニーズとしてICT(情報通信)活用がクローズアップされ、売り上げ全体の7割を占めている。ICTを軸とした空間のトータル提案によって、製品販売につなげる狙いがある。「単に製品を売るだけでは成長はない」と言い切る。

◆現場対応も意識
 シャッター業界にも、単品売りから脱皮する動きが広がっている。建物エントランスを構成する製品群をまとめて売り込み、販売チャンスを広げる狙いからだ。各社によって多少の戦略の違いはあるが、三和シヤッター工業ではビル開口部の関連会社を束ねた「多品種化」の営業方法にかじを切った。いわばビル開口部へのトータル提案である。興味深いのは現場対応も意識している点。「これからは多品種に対応する多能工が必要になる」と、長野敏文社長は次のステージに歩を進める。
 住宅リフォームの市場開拓に手を組むTOTO、大建工業、YKKAPのTDY連携も、いわば多品種化の切り口に他ならない。住宅リフォームは製品単品の取り替えというよりも水まわり、床、窓など関連した空間をひとまとめに行うケースが多い。資本関係のない3社だが、共同のショールームを持つなど住空間という枠の中で連携した販売によるシナジー効果に力を入れてきた。他の製品メーカーも賛同し、TDYグループの輪は広がりを見せている。

◆設計者に一石投じる
 東京五輪までは一時的に安定した需要は見込めるが、人口減少を背景に国内建設需要は右肩下がりに縮小することは明らか。それでも内需と向き合い、成長を遂げるには売り方を変え、地道にシェアを拡大していくしか道はない。メーカーの中には設計者や施工者に向け一石を投じる動きも出てきた。一見遠回りのようだが、最終的に自らの事業に取り込む戦略が根底にある。
 LIXILが2次元設計図面を3次元化し、営業提案や顧客との打ち合わせに活用してもらおうと、工務店向けのクラウドサービス会社「ケイエンジン」を立ち上げたのは1年前。3次元データには実際の製品データが反映され、見積もり額まで詳細に導き出せる。クラウドにはライバルメーカーの製品データも蓄積し、ユーザーの工務店が自由に製品を選択できるように心掛ける。各分野の製品で一定の販売シェアを持つLIXILではサービス活用の母数が増えれば、おのずと選ばれる製品数も増える腹積もりがある。

◆生産プロセスを改革
 一方、製品によってはトータル提案の切り口が難しく、単品売りの中で活路を見いだすしかない分野も少なくない。省エネ時代の到来を背景にLED(発光ダイオード)への交換需要に忙しさが増している照明器具業界だが、外資も含め参入メーカーが多く、結果的にコスト競争を余儀なくされている。
 岩崎電気ではトヨタ自動車のものづくりに学び、製品開発当初に定めたコスト目標に向かい、関連部門が一斉に議論を進める大部屋型の製品づくりにシフトした。「企画から製品化までのリードタイムは大幅に短縮され、それが製品の競争力につながっている」(五月女和男取締役埼玉製作所長)。
 生産システムの改善活動を続けている岡村製作所では在庫を抱えてしまう見込み生産を改め、受注生産の割合を高めることで競争力を確保している。このように調達から製造、納期までを突き詰めた場合、生産プロセスの改革は物流の効率化まで発展していく。段階的な消費増税や、東京五輪後の市場縮小など需要変動が激しい中、柔軟な生産スキームが収益力を生む。多様化するニーズといかに向き合うか。メーカーの生き残りに向けた改革は始まったばかりだ。
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