2015年5月26日火曜日

【産業界の動向と展望】メーカー 潮流は人材グローバル化

建材や素材など建設関連のメーカーは多岐にわたるが、人材育成の流れでは分野を問わず製品販売との密接な関係性が見えてくる。注目すべきは、自社製品が流通し、現場で納品されるまでにかかわるビジネスパートナーの育成に力を入れている点だ。一方で海外事業の拡大や事業戦略の多様化に伴い、グループを挙げた共通の人材づくりに乗り出す動きも出てきた。写真は900人が受講したYKKAPの非溶接研修。

◆セメント業界 関係強化、取引先を育成
 復興工事の本格化や五輪開催による首都圏建設需要の増加に対し、安定供給体制を整えているセメント業界。セメントメーカーの中には事業収益が過去最高を更新する社もあり、取り巻く事業環境には追い風が吹いている。宇部興産と三菱マテリアルの共同販売会社である宇部三菱セメントでは、ユーザーである生コン会社との関係強化を経営の最重点テーマに掲げている。氣仙伊作社長は「われわれは販売と物流を専門とする会社であるだけに、生コン会社の販売支援を含めた対応が業績に影響してくる」と焦点を絞り込む。
 現行中期経営計画ではあえて数値目標を掲げず、10年先を見据え、何をすべきかを具体的に示した。その一つとして盛り込んだのがユーザーとの関係強化であった。現在は一定規模の需要が期待できるが、将来的には東京を中心とした首都圏以外では需要が見込めず、各地域で活動する生コン会社にとっては死活問題になり兼ねない。
 同社の事業規模で2次製品メーカーも含めれば、取引先は1000社を超える。「生コン会社から経営の相談が来た時、具体的なアドバイスができるように、各支店に対して地域の実情を分析することを明確に指示した」(氣仙社長)。将来の需要減に直面した際、地域の生コン会社は本業で経営を維持することができない可能性もある。セメントメーカーにとっては経営指導も含めた取引先の育成が自らの事業戦略上でも重要になっている。

◆建材メーカー 製品高度化で施工力不可欠

 建材メーカーも、ビジネスパートナーの育成が製品販売に大きな影響を及ぼしかねない。省エネ要求の高まりを背景に、高断熱や高機能などを売りにした新製品をメーカー各社が競い合うように投入している。製品自体が変われば、それを取り付ける施工方法も変化を余儀なくされる。施工を担う職人へのアプローチは製品普及の重要なポイントになってくる。
 4年間の累計で導入現場が600件を超えたYKKAPの非溶接工法。溶接で躯体に仮固定していたサッシの取り付け作業を粘性の高い樹脂材による固定方法に置き換えることで、現場での火災リスク発生を抑える点が評価され、近年は公共建築現場にも広がり始めた。同社は他社との差別化戦略として、サッシ製品の非溶接対応を加速させている。
 並行して進めているのがサッシ職人のスキルアップだ。非溶接の作業は従来と大きく異なり、しかも自ら墨出しを行う作業も求められる。作業手順などを研修させる特別講習を定期的に実施している。他業種と同じように人手不足が表面化しているサッシ職人だが、火災リスクを回避できる安全確保に注目するケースも多く、仕事の合間を縫って講習への参加も積極的だ。施工研修を受領した職人は900人にも達する。商品企画部ビル商品企画グループの宇田川敏規エントランス商品リーダーは「製品の性能をきちんと発揮するには、現場で取り付ける作業員のスキルアップが欠かせない」と強調する。
 高齢化が深刻化している大工職人の育成・確保には、ハウスメーカーが動き出した。製品を具現化する担い手がいなければ、自らの事業は成立しない。セキスイハイムのように、社員大工制度を創設し、大工志望の若手を従業員化する取り組みもあれば、大和ハウス工業や三井ホームのように協力会社や工務店に対して育成の補助を行い、大工職人の育成につなげる動きも広がっている。
 海外事業の拡大に伴い、組織や人材育成の方針を転換する流れも出てきた。2020年度の海外売上高目標として最大1兆5000億円を掲げるLIXILは事業拡大に合わせ、傘下に納めた海外ブランドを分野別に区分けした販売体制に移行した。同時にグループ社員の人事評価も、グローバルの視点から共通化する方針だ。
 藤森義明社長は、グルーバル化を成長戦略に掲げる大きな理由として「世界中に優秀な人材がたくさんいる。そうした人材を的確に評価し、リーダーとして育てていく。これまでは外から人を迎え入れてきたが、これからは社内で人を育て成長していく段階に入った」と強調する。メーカー各社は分野を問わず、海外事業を成長領域に位置付けているだけに、人材育成のグローバル化が今後の潮流になることは言うまでもない。
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