2015年5月26日火曜日

【産業界の動向と展望】専門工事業 躯体・型枠・鉄筋・内装・基礎

◆躯体 日躯体の取り組み・地位向上へ国家資格を
 社会保険未加入対策や賃金改善の取り組みで、「他職種に後れを取っている」ともささやかれてきた鳶・土工職種も、本腰を入れ始めた。日本建設躯体工事業団体連合会(日躯体、才賀清二郎会長)が4月に発表した「鳶土工従事者適正賃金の検証と提言」では、鳶・土工の賃金の低さと土工(建築)職種の地位向上に向けた国家資格の創設、社会保険加入に向けた決意を示した。
 提言の発表会見で才賀会長は、「鳶・土工はゼネコンと表裏一体で、賃金も他職種に比べれば優遇されてきた」と賃金改善や社会保険加入の動きが鈍かった理由を説明した上で、「われわれもおんぶに抱っこではいけない」と本腰を入れる決意を表明した。

 提言では、元請けが積算に使用している単価が実際の作業員が受け取っている賃金であることを証明した。問題点は、その元請けの単価が鳶・土工ともに公共工事設計労務単価より3割近く低く、日本建設業連合会が目標としている全産業平均年収には到底及んでいないということであり、その改善を強く訴えた。
 特にコンクリートの圧送作業と一体的に作業する建築の土工は、構造物の品質に大きな影響を与える高度な専門技術が必要で、本来は設計労務単価上の「特殊作業員」であるべきにもかかわらず、単価が4割近くも低い「軽作業員」として扱われることに強い危機感を示した。この地位の低さが処遇の低さの原因であり、地位向上のための国家資格の創設に向け、関係団体や行政と協議を始める考えを示した。
 さらに、社会保険未加入対策では、他職種に後れを取っているとの認識を明確にし、法定福利費を別枠明示した標準見積書の提出に取り組む決意を表明した。焦りを隠さない理由は、他職種の動きだけでなく、現場作業員の全員が社会保険に加入している前提で法定福利費を支払う動きが大手ゼネコンに広がっていることにある。元請けから100%加入として支払われているにもかかわらず、実際は未加入者が存在した場合、支払われた法定福利費は下請企業の余剰金(利益)になりかねない。利益が課税対象になる問題だけでなく、作業員に支払われるはずの法定福利費が下請企業に残ることが批判されかねないという切迫した問題意識が背景にある。

◆型枠 19年に平均年齢50歳!? 日本型枠が14年度雇用実態調査
 国土交通省や日本建設業連合会などが、将来的な技能労働者不足の推計数値を示し、担い手不足への対応の必要性を訴える声が広がっている。一方で大手ゼネコンの間には、いまの需要量であれば、適正な価格さえ払えば技能労働者は確保できるという見方が定着しつつある。では、実際に技能労働者を抱えている専門工事業者は、どのように見ているのか。日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)がまとめた「2014年度型枠大工雇用実態調査」では、その逼迫度を明確にしている。
 調査では、242社1万0989人(全国の職長と技能工の合算)を対象に、2024年まで毎年の型枠工の労働者数予測も年齢別階層(10歳ごと)ごとの技能工数をした。
 これによると、14年8月末時点で、15歳から34歳までが全体に占める割合が、全産業平均で25.9%に対し、型枠工は19%にとどまっている。一方で、55歳以上の割合は全産業平均が28.9%に対し型枠工は既に37%に達している。今後、毎年の入職者数が0.4%ずつ減少することを前提にすると、20年夏季東京五輪開催直前の19年には技能工の平均年齢が50歳に達する。就業者も10年比で24年には34%減少するという。
 「人口推計は必ず当たる」と言われるゆえんは、人間が毎年1歳ずつ年を取るからであり、今回の調査も同じように現在の年齢構成を単純に24年までずらしたにすぎない。一定の前提を与えている新規就業者数は変動があり得るとしても、肉体労働的側面が強い型枠大工の職種では高齢者の退職延長も難しく、退職者数は必ず当たるとも言える。五輪の工事を担う型枠大工の多くが50歳であるとすれば、その分、1人当たりの生産効率も下がり、単なる人数だけを見ていれば元請けや発注者は大きなしっぺ返しを食らうことになりかねない。
 社会保険加入や労務賃金の引き上げなど新規若年入職者の確保がいかに求められているかを明確にしたものであり、20年という「すでに見えているターニングポイント」に向け、専門工事業者、元請け、技能者、発注者、行政が一体となった取り組みの加速が求められている。

◆鉄筋 ベテラン職人が大学で手ほどき 東鉄協が講師派遣し未来の職長候補育てる

ものつくり大学の授業で学生は初めて鉄筋の組み立てを行った
未来の職長候補生に、ベテランの職人が自ら施工の手ほどきをするケースも広がっている。鉄筋業では、「ものつくり大学建設学科」1年生の授業に、東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、館岡正一理事長)が2014年11月、加盟企業社長が非常勤講師として鉄筋組み立て授業を行った。東鉄協など鉄筋工事業界もこれまで全国各地で工業高校などでの出前講座などは行っていたが、東鉄協にとって大学の授業に非常勤講師の肩書きで派遣するのは初めて。
  同大学では、これまでもRC造建築物を実際に建設する授業は行われており、元ゼネコン社員や、とび・土工、型枠大工の各職人が非常勤講師を務めていた。今回、東鉄協が非常勤講師を同大学に派遣したことで、学生にとっては14年秋からの実地授業からは、躯体3職種ともベテラン職人から直接、施工の基本を教えてもらうことになった形だ。
 実際の授業では、まず教室で大学構内に建設するRC造平屋倉庫についての、各種工事の簡単な工程表や配置図、平面詳細図、立面図、断面詳細図、部材リストのほか、配筋詳細図などが配布され、各班に分かれて作業を行う時の現場での注意事項などを確認するKY(危険予知)周知を受けた。
 鉄筋工事で初めて非常勤講師を務めた、新妻尚祐東鉄協副理事長と矢島孝夫矢島鉄筋社長が、地中梁の組み立てと結束を手本を示しながら行った。
 授業を担当する田尻要教授は、「実践で建設業界の人たちが授業に参加することは学生にとっても大いに役に立つ」と期待感を寄せた。

◆基礎 全基連、東京都から認定受け「広域団体認定職業訓練」に

全国基礎工業協同組合連合会(梅田巖会長)は4月1日付で、実施する職業訓練について東京都から「広域団体認定職業訓練」の認定を受けた。全基連ではこれまで団体の事業として取り組んできた「新規採用者実践型教育・訓練」を7年目のことしから広域団体認定職業訓練として実施することにした。4月13日から5月21日まで実施している研修会には、青森、埼玉、東京、千葉、神奈川の5都県8社から16人が参加している。
 認定を受けたのは(1)登録基礎工基幹技能者講習(2)新規採用者実践型教育・訓練(3)基礎杭溶接管理技術者講習(4)アーク溶接講習会(5)建設機械施工とその作業装置取り扱い(6)安全衛生責任者(職長)教育--の6コース。
 広域認定には、団体会員が2つ以上の都道府県に所在し、受講生が3都道府県以上から来るなどの条件が必要。通常の認定訓練でも、実施主体に対する経費助成や受講企業への賃金助成はあるが、広域認定の場合はさらに、企業が支払う受講料の2分の1が助成される。
 アーク溶接、作業装置取り扱いなどにおいては必要不可欠な資格の取得と人材の育成のためにはコストがかかり、企業にとってはコストの軽減と人材の育成を図れ、メリットは大きい。

◆内装 全室協は出前講座とDVDでPR
 全国建設室内工事業協会(石田信向会長)は昨年7月、埼玉県川越市の東洋大学川越キャンパスで、同大理工学部建築学科の浦江正人研究室の3、4年生を対象に、「内装工事体験研修(鋼製下地・ボード)」の出前講座を開いた。富士教育訓練センターの協力で実施したもので、大学での実施は初めて。内装工事の仕組みを説明するとともに、その魅力を伝え、入職をアピールした。学生たちは、吊りボルト加工やハンガー組み立て・取り付けなどの天井下地の施工実習に取り組んだ。大学生を対象とした技能実習は富士教育訓練センターで行われているが、専門工事業の大学への出前講座はあまり聞かれない。
 また、全室協では、団体の紹介や内装仕上げ工事について紹介するDVDも作成し、会員企業や大学、工業高校などにも配布した。全室協という団体のPRとともに、大学生や専門学校生、高校生への求人を目的に作成した。ゼネコンの協力のもと、実際の現場で、軽天、クロス、床、ボードの工事の模様を撮影。会員企業は求人用として学校を訪問した際などに配布し、内装工事業に興味を持ってもらい、就職につなげる。設計事務所やゼネコン、官公庁にも希望があれば配布し、仕事内容への理解を深めてもらうことも狙い。
 DVDは3部構成で、第1部は全室協の取り組みや役割について解説し、団体の役割とその活動が紹介されている。第2部では内装工事を目指す若者たちへ、先輩たちがメッセージを送る。女性の内装工にも出演してもらい、内装仕上げ工事のおもしろさが伝わり、興味を持ってもらえるようにしている。第3部は内装工事の基本施工について、新人教育用の施工解説映像になっているので、入職した後の自分のやるべきことが分かるので、入職後をイメージしやすい。
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