2015年5月27日水曜日

【産業界の動向と展望】総力取材レポート 地方業界の今 中部・北陸

◆中部 技能者の不足感が緩和 建築は民需回復に期待感
 中部地方整備局は、2014年3月から管内地元建設業者のアンケートを集約した「中部建設業現場レポート-建設業の声-」をまとめている。同局が全国に先駆けて始めた取り組みで、尾張地方を始め9地域ごとに、景況感(受注状況)などを「DI値」で示しているほか、元請・下請企業の「主な声」を盛り込んだ。
 同レポートは、中部地域(愛知、岐阜、三重、静岡県)の建設企業の動向把握を目的に、約180社にアンケート、企業への個別ヒアリングを実施。3、6、9、12月の年4回集計している。「良い」の回答者数割合から「悪い」の回答者数割合を引くなどして、DIを算出している。

 直近の15年3月の景況感は、前倒し発注と平準化、さらに前年度補正分が15年度はなかったことが影響し、中部圏全体で「マイナス12」と前回(14年12月)から18ポイント下落。6月の予測は「マイナス7」と今回より5ポイント上がるものの、悪い傾向が続くと見ている。
 企業からは「仕事が少なく採算性が低くても受注する。国交省のWTO案件を20-30社で競争」(元請)、「型枠工事は採算性が悪かったが、昨年くらいから単価も上がり、(リーマンショック)以前の水準に戻ってきた」(大工)といった声も。
 3月の技能労働者の不足感のDIは「26」と、前回から37ポイント減少し、不足感が薄れつつある。6月は「20」とさらに解消する見込み。主な声として「今のところ東京五輪は名古屋まで影響していない」(塗装)、「技能者は日給の人もいて、なかなか土日休みが進まない。強制的に休みにしないといけないのではないか」(空調衛生)などの意見が寄せられた。
 技能労働者の労務費相当額の3月のDIは、前回から4ポイント減の「24」。6月のDI予測は「22」と、ほぼ横ばいで推移する見通し。賃金水準については「民間発注者はなかなか上がらない。新労務単価を提示しているが厳しい」(元請)、「希望単価に近づいてきた。現在は単価が合わない仕事は受けない」(鉄骨)といった声があった。
 また、今回調査から土木・建築別の集計も公表。3月の景況感、技能労働者の不足感・労務費相当額は、土木主体の企業(60社)、建築主体の企業(42社)とも「悪い」と回答。6月の見通しは、土木が3項目とも悪化傾向が続くと見る一方、建築は民間設備投資の増加から全項目が上向くと見方が広がっている。

◆北陸 “ポスト五輪”戦略が分水嶺 広域連携で構造変化に対応
 アベノミクスの効果は地域によってバラつきがみられ、政策効果を感受できない建設企業も少なくない。地域建設業にとって将来展望が不透明さを増す中、今後市場拡大が確実視される維持・補修分野に対する企業側の戦略的な備えは十分ではない。新設市場の急激な落込みも予想される“ポスト五輪”に対し、今のうちに戦略を組み立てておけるか否かが分水嶺になるとの声も聞こえる。
 社会資本のメンテナンスに特化した技術者、「メンテナンスエキスパート(ME)」を確保するために産学官共同で設立されたインフラ再生技術者育成新潟地域協議会。その1期生として受講した、新潟県上越市に本社を置く大陽開発の荒木克専務は「協議会を運営している発注機関、大学、業団体と受講生(修了生)との連携強化が必要だ」と強調する。専門技術を持った資格者確保という役割以外に、メンテ分野で産学官が協働する意味は大きいと感じている。特に自治体の技術職員とコンサル、そして施工企業がどのように分担して事業を進めるかといった課題について協議会の果たす役割は大きいようだ。
 一方、同じ新潟県内で中山間地に拠点を置く地域建設業の経営者は、「公共事業予算が横ばいで今後推移するといっても東京五輪に向け仕事の一極集中はさらに加速する一方、地方は大きなプロジェクトの計画や設計のストックもなく、先行きがまったく見えない」と不安を訴え、先行き不透明さが人材の確保・育成に二の足を踏ませていると強調する。維持管理市場拡大に備えた態勢整備についても、「維持工事は少額で、数をこなさなければならないが、現行社員を雇用していくだけの仕事量は見込めない」と見る。計画的な発注と地元優先を徹底しない限り、「除雪も防災も担えなくなる」と指摘する。
 北陸では、広域的な企業間の連携で生き残りを模索する動きも出てきた。ある地域建設業は隣県の土木専門工事業者と技術交流に乗り出した。土木構造物の補修に強みを持つ企業からノウハウを教わろうという狙いだ。地理的に近いが営業エリアは重ならず、自社が率先して取り組んでいるICTなどの生産効率化手法を逆に相手には伝授するという相互交流だ。メンテ時代が本格到来する中長期を見据えて両社の経営者は「今後の建設マーケットの構造変化に対応するには既存の枠組みだけではなく広範な連携が不可欠」と口を揃える。広域的な連携を生かし、早い段階からノウハウやネットワークを構築して、発注者へも提案し、事業を主導していくビジョンを描く。
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