2015年5月20日水曜日

【建設産業 担い手不足の現状と課題】インタビュー:公益財団法人産業雇用安定センター会長 矢野弘典氏

【高齢者でも働き続けることができる制度を】

●知的パワーを生かせ

--日本が直面する人口減少と高齢化の現状と課題は

 「前提となる経済社会の動きがどのようになっているかということから始めたい。世界の経済社会の仕組みを揺り動かしているパラダイムチェンジをもたらしている4つの大きな潮流がある。1つ目はグローバル化、2つ目はICT(情報通信技術)革命、3つ目は少子高齢化、4つ目は価値観の多様化だ。少子高齢化の問題は端的に人口減に表れてくる。生産年齢人口が下がることによって、それをどのように補うかという議論になる。これは供給側の論理だ。一方で、高齢者が増えるので、需要も変わってくる。そのように需給の変化があることが1つ。それから広い意味で高齢者や女性の社会参画が求められるようになった。特に高齢者の長年の経験を基にした知的パワーを放っておくのはもったいない。高齢者の社会参画というのは職場への復帰だけではない。ボランティアやNPO法人などにも社会参画してほしい。特に教育だ。そういうところに人生経験を生かしてほしい」

--人口減少に対し取り組むべき必要な対応とは

 「いわゆる国の成長戦略をいかに実行するかの問題だ。女性や若者、高齢者の活躍の促進、働き方改革、外部労働市場の活性化、外国人材の活用などいままでも言われてきたことであり、これらを実行することで人口減少傾向に対する処方箋になっていくと思う。産業雇用安定センターは、生涯現役社会を実現するため、モデル企業をつくり2年間で27社が参画してくれた。定年をなくしたり、70歳以上にしたり、継続雇用を70歳までにするなど選択肢は各社ごとに決める。高齢者が健康でやる気と意欲、能力がある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる制度をつくるため、国の委託事業として取り組んでいる。これが広がっていけば世の中が変わっていくのではないか。経験の豊富な高齢者から若手に技術の移転も行われていくし、企業の活性化にもつながっていく」

●本当のリーダー育てる

--地域と地方都市が活力を取り戻すための処方箋は

 「産業経済の活性化ということでは、各県が企業誘致に向けて熱心に競争している。しかし、日本国内の生産能力やキャパシティーはそんなに上がるわけではない。パイの取り合いをしているわけだから、日本全体として見ると少し検討が必要だ。そうすると、これまで日本があまり行ってこなかった海外企業の誘致を本当に考える必要がある。発展していく国は東南アジアを始め、世界に多くある。日本が投資するに値する魅力ある国であると発信するためにはどのようにしたらよいか考える必要がある。町の創生ということでは、一例として内陸フロンティアの開拓があるのではないか。産業経済が活性化して魅力ある雇用の場が増えていくことが大事だと思う」

●日本的経営の大切さ

--地域創生に必要な視点は

 「各県とも人口が減るのは全国的な現象だが、スピードに差がある。人口減少に歯止めをかけるのは簡単なことではないが、国が地方創生に本腰を入れ出した。基本的視点として3点挙げられていて、良いと思っているのは『東京一極集中を是正する』だ。私は首都を移転したらどうかと思う。それくらいの荒療治をしなければ難しいかも知れない。それから、議論が下火になって心配しているが『リーダーシップの再興』を本気で考えるべきだ。身近なところでは学校教育だ。国を引っ張る本当のリーダーを育てる必要があると思う」

--産業界・企業に求められる人材不足対応について

 「建設、介護・看護、保育分野では人材不足が顕在化している。雇用管理、労務環境、処遇の改善、潜在している有資格者の掘り起こし、マッチングの強化などは当然のことだ。国の施策も多くあり、いずれも必要なことだと思っている。建設業は、技術者や管理者をまず育てる必要がある。困っているのは作業員だけではない。建設業に限らず人を大事にしなければいけない。人を消耗品のように扱ってはいけない。これだけの人手不足になれば、日ごろどれだけ人を大事に使っているかで、会社の行く末が決まるのではないか。日本的経営というものが、一時期古新聞のように扱われたことがあるが、そうではないと思う。それを経営者は胸に刻んで努力すべきだ。そのような経営者のところに人は集まる」
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