2015年5月21日木曜日

【建設産業 担い手不足の現状と課題】行政、学会、団体も支援に動く

■担い手確保総論

◆国交省と厚労省 地域ぐるみの活動後押し
 「担い手3法」が本格施行された2015年度、国土交通省は財政面も含め、建設企業などによる人材確保・育成活動の支援に本腰を入れる。キーワードの1つは「地域ネットワーク」。建設会社や業界団体、教育訓練校、地方自治体などが連携した地域ぐるみの取り組みを具体化させ、若者や女性の入職・定着を後押しする。事例を複数創出し、全国規模で水平展開して機運を高める。
 また、直轄工事の入札契約でも若手技術者が活躍しやすい環境を整える。国交省が率先して新たな試みに乗り出すことで、市町村などのさまざまな公共発注者への広がりも狙う。
 厚生労働省は14年度から、産業間の若年人材獲得競争で厳しい状況にさらされている建設分野を、人材不足重点対策分野の1つに位置付け、さまざまなメニューを取りそろえて建設人材確保対策を進めている。雇用安定関係に加え、職業能力開発関係でも企業や団体の取り組みを支援する。

◆日建連と全建 つながる魅力PRの取組み
 現在につながる担い手不足に対する危機感が政策的に打ち出されたのは、国土交通省がまとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」だったと言える。専門工事業界における建設業就業者の高齢化と若年入職者の減少に対する切迫した危機意識が政策を後押しし、建設技能労働者の将来的な不足を予想したデータまで示した。その足掛かりとなったのが社会保険未加入対策であり、加入に向けた本気度を業界に説明する過程で、担い手不足に対する建設業界全体の危機感と対策に本腰を入れる機運を高めた。
 業界団体では従来から、建設業を若者にPRする必要性に対する認識があり、その先駆けが日本土木工業協会(現日本建設業連合会)による「100万人の現場見学会」だろう。こうした意識は、担い手確保の機運の高まりとともに、日本建設業連合会にも受け継がれ、現在の各種取り組みへとつながっている。
 地域建設業界では、若者がいないことに対する危機意識は大手ゼネコンよりも強かった。だが、経営環境の厳しさから、「何とか今を乗り切る」ことに目を向けざるを得なかった。担い手3法の成立などの中で、全国の建設業者の潜在的な声が表面化し、全国建設業協会としての取り組みを推し進める結果となっている。(関連記事は29面)

◆振興基金 教育訓練体系の構築提言
 建設業振興基金は2013年に「建設産業人材確保・育成方針策定会議」を設置し、建設業界で若い人材をどう確保すべきか検討した。その発端は「大学や専門学校を卒業する80万人のうち半数以上が早期退職したり定職につけない状態にある」(内田俊一理事長)という現状だ。若者が仕事の理想と現実のギャップに苦しみ、将来の生活にも不安を抱く中、一生を託し、能力を存分に発揮できる安定した就業の場に建設業はなり得る--。実現に向け、業界全体を挙げた教育訓練体系の構築を提言した。
 会議は同年2月に設置、12月に最終報告となる提言をまとめた。提言では、学校から社会に送り出された若者を積極的に受け入れ、教育訓練の施設や機会も活用しながら育成することが急務と明記。取り組みとして▽OFF-JTを実施する機関の充実・活用▽キャリア教育・職業教育への協力体制の構築▽工業高校、専門学校などの学習活動への支援体制の確保▽キャリアアップの道筋を明確化▽産業界と教育区間などの連携強化--の5つが必要とした。
 実現には、行政と業界、教育機関、訓練施設、若者自身が共有できるネットワークとその中核機能を設ける。センターの役割に富士教育訓練センターを位置付け、現在はそのソフト・ハード両面での機能拡充に動き出した。

◆土木学会 次世代技術者育成活用へ

 土木学会では、2014年11月の創立100周年にあわせて発表した『社会と土木の100年ビジョン-あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く-』で、土木技術の次世代への継承の必要性を柱の1つに掲げた。学生の理工系離れに対する強い懸念を示し、小中学校の教育から土木に興味を持たせ、土木技術者のキャリアパスを見せる教育体系の必要性を強く訴えた。直近10年間で実施すべき重点事項を示した「JSCE2015」でも、次世代技術者の育成と活用を柱に掲げた。
 創立100周年記念事業では、「未来のT&Iコンテスト/アイデア部門」として一般から未来の土木プロジェクトの提案を募集。小学生らの提案のうち、優秀作品について、実際のゼネコン技術者など土木エンジニアと一緒になって実現に向けた技術的検討を進めた。東京都江東区立越中島小学校の藤井雄也くんが提案した「ゆたかな森のおがくず道路」が最優秀賞に輝いた。
 地盤工学会でも、モグラをモチーフにした「ドクターモグの地盤工学教室」のサイトを開設し、地盤の実験動画を公開したり、関東支部で「科学体験教室」を開くなど、学会を挙げて土木に興味を持ってもらう取り組みが広がっている。

■公契約条例 公共発注者が職人賃金担保――野田市の制定皮切りに全国へ


自治体が、自ら発注する工事で実際に従事する技能労働者(職人)の最低賃金を決めて、その支払い履行を元請けに求めるのが「公契約条例」だ。 2009年9月に千葉県野田市の制定を皮切りに、 首都圏だけでなく全国各地の自治体に広がりつつある。
 元請けと下請け、下請けと再下請けといった民間同士の契約について、決められた職人の最低賃金が守られない場合、元請けとの契約解除条項も盛り込むなど自治体が民・民契約に踏み込んでいるのが大きな特徴。賃金水準はともかく、自治体が自治体発注工事に従事する職人への支払い賃金を担保することは、結果的に職人の処遇改善支援とも言える。

公契約条例は、もともと日本労働組合総連合会(連合)が、国の法律として公契約法制定を求める活動の一環として、全国建設労働組合総連合(全建総連)が全国各地で活動している。労働者の生活確保を目的に国が公共調達にかかわる労働者の最低賃金を定める公契約法が、既に最賃法があることなどで実現のめどが立っていないため、労働組合は自治体条例の実績を積み上げることに注力している。
 一方、自治体も域内住民でもある職人の賃金確保が生活水準維持や雇用確保につながると判断するケースが、人口減少と高齢化、地方創生などの動きの中で拡大していると見られる。
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