2015年5月22日金曜日

【公共発注者にも広がる技術者不足】ニーズ高まる発注者支援 組織内で進む“核家族化”へ対応

◆東京都道路整備保全公社の取り組み 業務と“人”育成も受託
 東京都道路整備保全公社(山口明理事長)が担う事業に、区市町村からの受託事業がある。2014年7月にスタートした道路管理者への定期点検の義務化で社会的な関心を集めている橋梁の点検業務もその1つ。高度な専門的知識や経験が必要な定期点検を、管理者である区市町村に代わって実施。受託事業による代行で、技術者不足に悩む発注者を支えている。

 公社は、1960年に東京都駐車場協会として設立された。2004年に「東京都道路整備保全公社」に改称。東京都の外郭団体として事業推進のパートナーに位置付けられる存在だ。その事業の数々は、道路事業や駐車対策事業を柱に、用地取得や無電柱化の推進、道路アセットマネジメントなど多岐にわたる。特に自治体への技術的な支援や業務受託を通じた都市経営へも貢献している。
 しかし、橋梁の点検業務で言えば現在、公社が受託しているのは国分寺市のみ。「東京23区を始めとする基礎自治体は受託事業をもっと活用すべきでは」(都建設局幹部)という声があるように基礎自治体が公社の潜在能力を活用し切れていない部分は多い。裏を返せば、都内の基礎自治体は「そこまで深刻な技術者不足に陥っていない」(都建設局幹部)という見方もできる。
 ただ、全国的に見れば、発注者サイドの技術者不足が徐々に大きな課題として忍び寄っている状況に変わりはない。
 実際に、山口理事長も「これまでは都なら都、区なら区という1つの組織の中で人材育成はなされてきた。(業務の効率化で)先輩が後輩を育てる、経験が人を育てるというプロセスが1つの自治体の中だけでは難しくなっている」と指摘する。
 「民間と行政、あるいは他産業を巻き込んで人材の奪い合いになっている。これだけ人材が不足していけば、組織内も(一般社会と同様に)“核家族化”が進む。子どもたちを地域で育てるのと同じように職員も複数の自治体が連携して地域で育てるような感覚が必要だ」と社会に例えて人材育成の重要性を強調する。
 「今後の事業展開のあり方として、区市町村から単に受託するだけでなく、携わる人材ごと受け入れて育成するような形を考えていきたい」と話すように、人材育成を組み込んだ受託事業の形も既に頭の中にある。
 区市町村が橋梁の点検業務を公社に委託する場合、公社に担当職員ごと委託(派遣)することで人材育成も実践。単に区市町村から業務を受託して成果品を渡すだけでなく、人材育成を含めて受託するイメージだ。結果として人材育成も包括した受託事業は、公社にとって、建設コンサルタントとは異なるセールスポイントにもなる。山口理事長は「それが公社事業の発展にもつながる」とみている。

◆復興現場でも実施 環境省の除染等工事監督支援
 発注者支援業務は、東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興・再生に向けた現場でも実施している。その1つに環境省が第一原発周辺11市町村で進める除染等工事の監督支援業務がある。
 監督支援業務は、環境省の監督職員が円滑で的確に除染等工事の契約事項の履行を確認し、的確に受注者との協議ができるように支援することが目的。業務は監督職員の補助をはじめ、新工種の単価作成、数量総括表の精査、設計変更のための資料作成支援、工程、進捗管理支援と多岐にわたる。
 施行計画書や施行体制の把握から、施工時の監督、施工管理、材料検査、安全対策、地元住民への配慮、設計への対応、完成検査と監督にかかわるすべての業務を支援している。
 環境省の監督職員は2014年度が約70人、15年度は除染の完了に向け作業がピークとなることから約100人となっている。監督職員は工事の監督とともに、支援業務を担う「委託監督員」の監督も併任している。職員数は実人数で、監督は市町村ごとに担当している。このため、同一市町村内で複数の工事が同時並行的に進んでいる場合は、工事ごとに監督職員として任命していることから、延べ人数は実人数の2、3倍になるという。
 また、支援業務1件当たりの期間中における委託監督員の最大人数は26人にものぼる。
 除染等工事は大規模かつ面的に広範囲に実施する過去に例をみない工事だ。また、住民の早期帰還を目指して、除染を確実、迅速に進める必要がある。
 福島の復興・再生に向け、環境省福島環境再生事務所では「職員が一丸となって職務を遂行することに加え、地元に精通し工事に習熟した民間事業者の経験や知見を活用することで、一層の除染の加速化、適正化が実現できると考えている。支援業務では、工事監督や除染関連業務の経験者を求めており、広範囲となる作業現場の安全管理や適正な除染を徹底していきたい」と話している。

◆群馬県建設技術センター 道路点検の発注・監理代行
 太田昭宏国土交通相が“メンテナンス元年”を宣言した2013年度、群馬県建設技術センターは、技術職員が不足する県内市町村の「道路ストック総点検事業」の発注を支援するため、地域一括発注方式を同年4月に開始した。市町村の道路施設点検業務をセンターが受託し、代行する。また、統一基準の点検方法を学ぶ講習会を開催し、修了証を受けた県内の測量設計コンサルタントに業務委託する方式で、成果品の品質を担保する。
 14年度に、国土交通省が道路管理者に道路施設点検を5カ年サイクルで実施することを求め、県内全道路管理者は群馬県メンテナンス協議会を設置。検討の結果、センターが、▽橋▽トンネル▽横断歩道橋▽ボックスカルバート▽門型標識--5分野で支援を希望する市町村の発注・監理監督を代行している。
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