2015年5月19日火曜日

【新市場】ダム再生 貯水容量・放流能力・機能向上 有効活用に熱視線

◆エネルギーを確保
 無駄な公共事業の象徴とされ、政治的PRの中で狙い撃ちにされた「ダム」。だが、急峻な地形と豊富な雨量を持つわが国にとって、ダムは大容量・安定的なエネルギー確保や広範囲を守れる治水対策として、効果を発揮することは既に歴史が証明している。日本ダム協会が公表している『ダム便覧』によると、国内には2750のダム(堰を含む)が存在する。これらの有効活用に向けた「ダム再生」が始まっている。インフラ再生市場の中核として建設業界も熱視線を送る。写真はダム再生事業で完成した夕張シューパロダム。

◆広範囲カバーする治水
 3月7日、北の大地・北海道の石狩川水系夕張川で進められてきた「夕張シューパロダム」が竣工した。1961年に完成した総貯水容量8720万m3の大夕張ダムを、総貯水容量4億2700万m3にまで再生した。過去幾度となく水害に見舞われた石狩川水系の抜本的な治水対策、北海道有数の農業地帯で増大する農業用水の需要への対処、安定した水道用水・電力を供給する新たな水源となる。
 国土交通省では、堤体のかさ上げや既設ダム直下でのダム再構築などによる「貯水容量の拡大」、トンネル洪水吐や放流管の増設といった「放流能力の拡大」に加え、排砂施設や水質改善施設などを新設するダム機能を回復したり操作・運用の見直しによる『ダム機能の向上』という3種類のダム再生を進めており、現在でも全国十数カ所で事業を実施している。
 こうしたダム再生事業は、国交省直轄事業以外も含めてこれまでも進められており、『ダム便覧』によると、事業中のダムも含めて92カ所が再開発された。東日本大震災を契機とした安定的なエネルギーへの活用、既存ストックの有効活用が社会的なニーズとなる中で、各方面からダム再生事業に対する期待が集まっている。


■業界の期待 「維持管理・更新」工法の中心

 鉄鋼メーカーや建設会社を中心に幅広い分野の民間企業や学識経験者などで構成する日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の水循環委員会(竹村公太郎委員長)は、2013年12月に「純国産の自然エネルギー・水力による持続可能な未来の社会」と題した提言を公表した。既存ダムを最大限水力発電に活用すれば新たに出力930万kW、年間324億kW時の発電が可能という試算を提示。さらに、既存ダムの用途変更やかさ上げ、ダム排砂などによる貯水池容量の回復、既存ダムの高度利用など、まさに「ダム再生」によって、30年までに出力1000万kW、年間発電量350億kW時の水力開発を目指す目標値を示し、関係各省庁に実行を求めた。
 建設業界も動き出している。日本建設業連合会(中村満義会長)は、社会資本の老朽化への対応を検討するインフラ再生委員会が、13年に「インフラ大更新に向けた戦略的対応」と題する資料をまとめた。点検・診断・補修、更新、維持管理などの各分野で会員が保有する新技術など15件を掲載した。中でも最も大きな市場として期待されるのが「更新」であり、その中心が「ダム再生」だ。大深度水深下での堤体放流管増設工事やトンネル洪水吐新設工事、ダム貯水池における堆砂対策など、ダム再生に関連する新技術を掲載し、発注者に各種ニーズに対応できることをPRしている。また、14年には「大切なインフラを未来につなぐ」と題したパンフレットを作成。会員が保有する維持管理・更新のための技術や、日建連が求める積算・入札契約方式をインフラ施設管理者にPRするためのパンフレットで、維持管理・更新の代表的な工法・技術計49件を掲載し、うち13件がダム関連となった。

■変化に応える 新たなニーズが建設技術を磨く

 紆余曲折を経て、2月7日に起工した「八ッ場ダム」(群馬県長野原町)。国交省直轄による最後のダム新設事業とも言われ、国内建設業の建設技術を磨き上げてきたダム事業の現場がなくなることを憂う声も一時は聞かれた。だが、ダムに対するニーズの変化とともに、事業内容が変化したにすぎない。ダムの有効性は認識されつつあり、新たな市場の中で、ダム建設技術も再び磨かれていく。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿