2015年5月20日水曜日

【建設産業 担い手不足の現状と課題】インタビュー:芝浦工業大学理事長 五十嵐久也氏

【働く人が生きいきと意欲が持てるような現場に】

--芝浦工業大学の建設系教育の特徴は

 「建設系は、工学部の中の土木工学科(社会基礎、社会システムデザインコース)、建築学科、建築工学科、環境システム学科、そしてデザイン工学部のデザイン工学科(建築・空間デザイン領域)と6つの学びの系列がある。学生の意向や志望を反映すると、どうしても計画・設計・都市環境などの科目が重点になる。本年度の学部生の進路も、土木工学科では建設関連業にコンサルも含め42%が就職、そのうち78%がゼネコンで、あとは公務員、進学となっている。建築系学科では設備系、設計事務所、ハウスメーカーを含め建設関連業が63%であり、そのうち36%がゼネコンに就職している。就職者総数の22%がゼネコンである。建築設計事務所、住宅産業などに就活人気があり、ゼネコンやサブコンに好んで進路を求める学生は少ない。設計系に就職先を求める学生が多く、したがってカリキュラム編成の設計系、環境系が主体となり施工系の科目が少ない」

●学生志望と大きな隔たり

--なかなか厳しい数字です。ゼネコンを始め建設業界は、技術者不足にあり、その確保に熱心なのですが

 「学生が何を考え、何を勉強し、何になりたがっているか。建築を学んでいる学生の9割近くが建設の現場以外の仕事に就こうと思っているのではないか。建設現場で働こうという考える学生は、少数派といえる」
 「私は建設会社にいた時に、入社試験の面接者として面接を行ったことがあるが、学生の取得している選択科目はほとんど設計系なのに、どの大学の学生も等しく現場が好きだ、現場に行きたいと言う。そこで現場を見たことがあるのか、インターシップには? と質問すると、ないと答える。現場を見たことがないのに、どうして好きなのかと思ったものだが、学生の望む設計方面の就職が叶わないので、就職するために、そう言っているわけだ。ゼネコンでは、生産システムを担う、現場管理の人材を育てたいわけだが、学生の志望とは大きな隔たりがある」

●生産システム構造に問題

--そのギャップをどう埋めたらいいのでしょうか

 「それは簡単なことではない。なぜなら、それは現象の問題でなく、生産システムの持つ構造的な問題が出発点にあるからだ。現場の生産を担っているのは主職と言われるとび・土工、鉄筋工、型枠大工などの専門工事業の会社である。かれらは1次下請けとして構造体を組み立てるが、その仕事は、ほとんどが2次下請けに再発注され、職人から見れば、工期に追われ雨も酷暑も外の仕事で、無理も押しつけられる。ひところ3Kと言われた中で〈きつい〉ということは、受注産業の全体のスケジュールから派生することなので、簡単にクリアできるものでない」
 「学生がゼネコンに入社して新入社員教育で学んだ後、現場に赴任すると、先輩を見習いながら現場の段取り、手配や指示、人工を考え、工期に間に合わせることが仕事となる。それを手戻りなく、うまく進めるには、専門工事業の職長や職人と話をして、かれらの気持ちを汲みながら、コミュニケーションをとれるかどうかということが重要になる。大学も現場生産を重視したカリキュラムを用意しても、学生が入学希望しないのでは意味がない」
--理事長として、建設業界への提言がありませんか

 「現場で働く人が生きいきと仕事をする意欲が持てるような待遇に改善しなければならない。専門工事業の世界が変わらなければ、建設産業の構造や体質は変わらない。生産現場への関心や興味も生まれない。自動車やエレトロニクスを始め他産業は、生産システムを変えることにより産業の改革につなげているが、建設業はほとんどが現地の一品生産という制約もあり、生産の根本が変わっていない」

●現場での仕事に魅力を

 「学生が設計や都市計画には興味を持っても、建設生産には関心が薄いということは結局、仕事の魅力ということだろう。しかしゼネコンが利益を産み出す場所は現場であり会社もそれを期待しているのだ。会社に貢献し努力する価値のある仕事だ、ということをどう伝えていくかだろう。一昔前は現場の所長となれば、大きな裁量や権限があり、それらを駆使して現場をどう運営していくかということは、実に創造的な仕事だった。ところが、最近は裁量も権限も限定的になっているようだ。もっと生産現場で仕事をすることの魅力、言い換えれば生産現場によって会社が支えられ建設業界が支えられていることを改めて確認し、現場を意欲の持てるようなシステムに変える必要があるように思う」
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