2015年5月20日水曜日

【建設産業 担い手不足の現状と課題】インタビュー:東京大学公共政策大学院客員教授 増田寛也氏

【地方創生を契機に働く場を東京から地方へ】

--日本が直面する人口減少と高齢化について

 「日本全体が2008年から人口減少局面に入っている。ただ、自治体によって人口減少のスピードにばらつきがある。特に地方の中山間にある自治体は急激な高齢化も進んでいる。高齢者が減り始めている自治体は44%の794自治体ある」

●流出抑える対策必要

 「日本創成会議で試算したところ、49.8%の896自治体は、40年には20代、30代の女性が半減してしまう。こうなると消滅の可能性が現実のものになる。特に数千人規模の523自治体は危険性が非常に高い。出生率が全体的に低い中で、地方の出生率が低くなり、そこで生まれた人たちが東京に流出している」
 「また解決の処方箋は自治体ごとに異なる。少子化対策に一層力を入れる自治体、子どもは生まれるが途中でその地域からの流出を抑える対策をすべき自治体など違いがある。いずれもきちんと戦略を立てて取り組まないといけない。ただ、東京一極集中の問題は自治体だけの取り組みでは困難を伴う。政府が、まち・ひと・しごと創生本部をつくり、地方創生のビジョンと戦略を立てた。これに沿って自治体ごとに戦略を立てる必要がある」

--地域が活力を取り戻すための取り組みは

 「解決策の1つは、子どもが増えるよう結婚、出産、子育てに対し、さらに国が支援を強化することだ。高齢者にウエートがかかっている予算を子育てなどに振り向ける。また、地域住民が納得することを前提に、婚活に税金を使うことも必要ではないか」
 「もう1つは、地方で働く場の確保だ。働く場を地方に多くつくることと同時に、働く環境を整備しないといけない。低賃金で生産性が低いと魅力がないということになり、東京に出て行ってしまう。地方で働く場の魅力を高め、若年者に賃金がきちんと支払われ、多くの人たちが働ける環境にすることが大事だ」

●長期にわたる覚悟で

 「ただ、働く場の確保はこれまで努力してきたが、東京に一極集中し過ぎて効果が上がらなかった。東京にある本社機能を地方に移せればよいのだが、容易ではない。教育研修機能などは東京に置かなくても地方で効果が出る」
 「こうした取り組みの成果が出るのは、相当先になる。数十年先に人口減少傾向に歯止めがかかったというくらい、長期にわたる覚悟を持って取り組む必要がある」

--人口減少で産業界の人材不足も課題になっている

 「当面の人材不足は建設業界に限らず、介護分野でも深刻だ。当面、必要な人材は移民とは別で海外から求める必要がある。マクロの人口減少や産業人材の不足をきちんと示せば、各地域が解決策を導き出すことができる。人口減少対策の成果が出るのは相当先のため、その間、必要な産業人材は海外に求めることに加え、女性の社会参画や高齢者のさらなる活用なども進めて、当面の解決策を考えることが大事だ」
--今後の地方創生に必要な視点は
 「まちづくりは、まち・ひと・しごと創生本部が各省施策をすべて集めて縦割りではなく、自治体の創意工夫を生かし、自治体の考えを尊重して取り組むことになった。自治体はコンサルタントに委託せず、自分たちで考えることが求められる。また、単独の自治体でなく、周辺と連携して役割分担することも必要になる。国土形成計画の『対流する国家』という考え方も大事だ。地方創生を1つの契機に、東京から地方に働く場を持っていくことで、地方にも新しい仕事が創出される」

●業界はさまざまな提案を

--地方創生における建設産業界の役割は

 「社会インフラは、人間の出産、高齢化と同じだ。命ある社会インフラをどれだけ更新するのかは非常に重要になる。社会インフラを下支えする建設産業も、重要な役割を果たすことが求められる」
 「通行を確保しながら首都高速道路を更新することは、日本の建設産業界の実力だ。老朽化インフラをよりよくして、性能を高めるが多くのコストはかけないという、技術と使命感で実力を発揮してほしい。社会も一時期、インフラたたき的な面があったが、これからは建設産業界の重要性に気づいていくだろう」
 「地方でも必要な更新需要が新たに出てくる。ただ、地域での人材確保を懸念している。技能労働者を確保して地元で仕事ができるよう、建設産業界全体で考えることが重要だ。これまで地域の建設業は受け身の話が多かった。これからは局面が変わり、まちづくりなどを考えていく上で、業界がさまざまな提案をすることが求められている」
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