2015年5月18日月曜日

【プレーヤーの動き】ゼネコン 激動の10年間

 長く続いた建設投資の減少による冬の時代がようやく終わり、建設業界は久々の春を迎えつつある。しかし、その雪解けとともに、担い手の確保・育成など業界が抱える課題も表面化し、待ったなしの対応が迫られている。“旧来のしきたり”からの決別宣言以降、ゼネコン各社は公共工事の市場で過当競争を強いられ、リーマン・ショック後の建築市場の冷え込みが、経営の圧迫に拍車をかけた。その結果、完成工事総利益(工事粗利)率は低下し、そのしわ寄せは下請けにまで及んだ。このわずか10年の間に失われたものは大きい。その1つが産業の魅力であり、その結果が担い手不足という形で現れている。果たして建設産業の再生はあるのか。業界団体やゼネコンなどの動向から探る。

◆“旧来のしきたり”から決別
 建設業界の10年を振り返ると、まさに「激動」の一言に尽きる。最もエポックメーキングな出来事は、2005年冬のゼネコン5社によるコンプライアンス(法令順守)徹底方針の申し合わせに端を発した、翌06年4月の日本土木工業協会(現日本建設業連合会)による“旧来のしきたり”からの決別宣言といえる。
 この脱談合宣言は、建設投資が1990年代後半から減少傾向に入り、市場が縮小していく中、業界に深刻な過当競争をもたらした。“チキンレース”と揶揄(やゆ)されたダンピング(過度な安値受注)競争をゼネコン各社が繰り広げる中、 08年秋に発生したリーマン・ショックにより、景気が一気に悪化。民間設備投資で計画の中断や中止が相次ぎ、各社の受注戦略を狂わせ、金融機関の融資厳格化なども影響し、経営破たんが相次いだ。

◆コンクリートから人へ
 このような状況下で誕生した民主党政権は「コンクリートから人へ」を旗印に公共事業費を大幅に削減。その結果、10年度の建設投資は、ピーク時の92年度に比べて半減となる41兆9282億円にまで落ち込んだ。事業仕分けによる防災関連予算の削減に対して国民生活の安全保障を危惧する声がささやかれる中、東日本大震災が発生、その後の対応などもあって建設業界を取り巻く環境は一変する。

◆公共工事の入札不調 担い手3法の成立、土木工事積算基準の改定
 ゼネコン各社は東日本大震災の復旧・復興に追われ、12年12月に発足した第2次安倍内閣による大規模な緊急経済対策、消費増税に伴う駆け込み需要などで、市場が急激に拡大。しかし、20年近くに及ぶ建設投資の減少で技能労働者の離職、入職率の低下に伴う高齢化が進み、各社は技能労働者不足による労務費の上昇に苦しんだ。
 その結果、公共工事で入札の不調・不落が相次ぎ、事業の執行が危ぶまれる中、国土交通省は公共工事設計労務単価を実勢価格に合わせて2度にわたり引き上げた。さらに、技能労働者の不足は、ものづくりを生業とする建設業の根幹を揺るがすとして、人材確保・育成に向けて、担い手3法も成立。官民を挙げて産業の再生に向けて大きくかじを切った。
 また、国交省は土木工事積算基準を4月に改定し、一般管理費率を20年ぶりに引き上げた。一般管理費は、本社や支店などの従業員給料など会社維持のための必要経費で、この部分の積算額の上昇は、企業本体の収益回復と現場に携わらない社員の待遇改善につながる。これにより、技能者だけでなく、技術者の確保・育成に向けた環境も整ったといえる。

◆処遇改善へ日建連が提言 チャレンジしなければ将来はバラ色にならない
 担い手の確保・育成に対して、業界が手をこまねいていたわけではない。日本建設業連合会の前身である日本建設業団体連合会は2009年4月、技能労働者の処遇改善を目指し、「建設技能者の人材確保・育成に関する提言」をまとめ、その実施に向けた基本方針を決定した。
 提言では、▽優良技能者の標準目標年収600万円以上▽重層下請次数は原則3次以内▽作業所日曜全閉所と土曜日50%閉所実施に努める--などを目標に掲げ、梅田貞夫会長(当時)は「ハードルは高いが、チャレンジしなければ、建設業界の将来はバラ色にならない」と会員企業に積極的な取り組みを促した。
 この提言により、優良技能者認定制度の創設や重層下請次数の目標設定など一定の成果を得たものの、十分とはいえず。13年7月には、日本建設業連合会として「労務賃金改善等推進要綱」を策定した。
 要綱は、適切な労務賃金の支払い、社会保険等加入促進、適正な受注活動の徹底などを会員企業に要請。 国土交通省による13年度公共工事設計労務単価の大幅引き上げを「建設業再生のラストチャンス」ととらえ、「これを契機に業界あげて技能労働者の処遇の改善を実現し、定着させなければならない」との決意を表明した。
 その後、前回提言を見直した「建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言」を14年4月に発表。建設技能労働者の年収を20代で約450万円、40代で約600万円と定めたほか、18年度までに可能な分野で重層下請次数を原則2次以内、17年度までに下請会社で社会保険の100%加入など具体的な目標を設定した。
 そして、ことし3月には、25年までに技能労働者90万人の確保と35万人分の生産性向上を業界全体の目標に掲げた「再生と進化に向けて-建設業の長期ビジョン-」を策定した。
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